■■■「フィールド」■■■
(65点/サスペンス:結構オススメ)
1973年の10月。
夫婦の不仲から両親が別居する事になった幼い息子のスティーヴンは、別居の手続きが終わるまでの2週間の間、父方の田舎の祖父母の農場に預けられる事となる。
友達も居らず一人で遊ぶスティーブンは、農家の周辺を迷い歩くうちにトウモロコシ畑の奥の空き地で『隠すように捨てられた若い女性の死体』を発見。
祖父に死体の事を話すが信じて貰えず、その翌日の深夜にスティーヴンの部屋の窓辺に何者かが訪れるという事件が発生した事から、彼は『トウモロコシ畑の奥に恐ろしい『何者か』が潜んでいるのではないかと怯えるようになるが…
田舎の祖父母の農家を訪れた少年が『トウモロコシ畑によって隔離された場所』で恐るべき体験をするという、サスペンススリラー映画。
一応、この手のサスペンスによくある感じの『実話に基づく物語』というのが前振りされるのですが、別に実話であることを疑うほどドラマチックな話でも無いですし、いちいち『実話がベースの方が箔が付く』という程度でこの前振りを使うのはどうなんだと…
まあしかし、実話に基づいているからどうだという訳ではなく、サスペンスとしては非常に良い味を出した作品ですね。
系列としては、いわゆるサスペンス系の『雰囲気映画』に属するような感じの作品で、ファンタジー・ホラー系の映画祭で好評価されたタイプの映画だと言えばどんなノリかピンと来る人も多いでしょう。
ストーリーとしては少年が発見した『トウモロコシ畑に隠された死体』は何なのかというのを軸にしつつ、少年と祖父母、両親との関係を描くような感じのサスペンスドラマなのですが、とにかく全編に漂う『田舎的で牧歌的なんだけどどこか異様で不気味な感じ』の雰囲気作りが良く出来ています。
夜遅くまで遊び歩く親としての自覚のない母親、気が短くて怒りっぽい父親、その両親の不仲に心を痛める幼い息子という主人公達の設定の暗さに加えて、そびえ立つ迷路のようなトウモロコシ畑や、その奥の空き地に隠された女性の死体。
打ち捨てられた遊園地の廃墟、障害を持つ不気味な従兄弟たち、印象的に差し挟まれる連続殺人鬼チャールズ・マンソンのニュース…
といった、なんとも『鬱々(うつうつ)とした要素』や『退廃的な映像』が良い味を出しており、とにかく観ていて良い感じにネガティブな気分に浸る事が出来ます。
ただ、雰囲気は良いんだけどストーリーはぶっちゃけたいしたお話では無く、中盤の展開の遅さも加わってちょっとダレ気味なのは残念なところ。
中盤までがお話がなかなか進まない割には終盤が矢鱈と急展開な印象を受けたので、もうちょっと段階的に『事件の核心部分』に迫るような構成にしておいた方が良かった気もします。
少年の心理描写や寂れた田舎町の雰囲気は十分に描けていると思うのですが、構成としてサスペンス的な要素を取り入れている割には、その部分がちょっとアッサリしすぎかなぁと…
(ぶっちゃけ最初に少年が見つけた『女性の死体』の事とか、終盤では殆ど忘れそうになるようなイキオイでしたしね。)
ラストの落としどころとかはなかなか上手いですし、雰囲気映画の割には非常にキレイにオチているのは好感触でしたが、もうちょっとサスペンス的に盛り上がるような要素があっても良かったかも?
総評としましては、サスペンスとしては『どうなんだ?』と言う部分はあるものの、『雰囲気重視の不気味な映画』としては非常に良く出来た作品です。
70年代アメリカの田舎町の不気味なテイストを楽しんだり、少年の目線から見た不安や鬱な感じの雰囲気を味わいたいというのであれば、なかなか楽しめる一本だと言えるでしょう。
そういった感じの『雰囲気映画』が好きな人であれば割とオススメ出来る内容だと思いますので、その手のジャンルが好きであればチェックしておいても良い作品では無いでしょうか?
ちなみに、少し前に「ザ・フィールド」という割と微妙な感じのオカルト映画もあったので、観る場合はそちらと間違えないようにご注意を。