■■■「屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ」■■■
(55点/サスペンス)
1970年代、敗戦の影響がまだ尾を引き不況の続くドイツのハンブルグ。
安アパートの屋根裏部屋で暮らすフリッツ・ホンカは、いきつけのバーの『ゴールデン・グローブ』に通い詰めていた。
彼は目立たない地味な外見ながらも、その歪んだ性癖と欲望を満たすために、バーで知り合った売春婦や女性をナンパして部屋に連れ込み、その相手を殺害しては屋根裏部屋の壁の中に隠し続けるという行為を続けていた。
そんなある日、バーの前でペトラと名乗る一人の美少女に出会った彼は、彼女をなんとかしてモノにしようと画策するが…
敗戦間もないドイツで歪んだ性癖から殺人鬼となってしまったフリッツ・ホンカの送る日常を描いた、サイコサスペンス映画。
一応、連続殺人鬼が題材のサイコスリラー的なタイトルとジャンルの作品となっているのですが、実質的な中身の方は敗戦の影響で復興もままならない70年代のドイツを描いた、社会派的な雰囲気の強い人間ドラマといったテイストが強めの作品です。
お話としては、『経済や社会情勢の不安定な世界で不満を抱きながらも懸命に生きる人々を描きつつ、そんな中で身勝手な歪んだ欲望を満たすために殺人を繰り返していく主人公の日常』を描いていくという感じの展開。
当時の苦しい世界情勢や不安定な社会に対して、不安を抱えてバーで管を巻きつつも懸命に生きる人々の様子なんかがリアルに描かれており、戦後のドイツを描いた人間ドラマとしてはなかなか面白い内容といった感じ。
ただ、主人公がなんというかとにかく猛烈に気持ち悪いんですよね。
外見がどうこういう感じじゃなくて、ホントに『下品なクズ野郎』という感じで、恐ろしいほど身勝手なうえに女性にも暴力を奮いまくりで観ていてなんとも不快感しか感じられません。
このキモさがなかなか徹底したレベルなので、人によってはそれだけでゲンナリしてしまうかも?
ただ作品としては、当時の社会不安と共に殺人鬼の姿を描くことによって、不安感を増幅させられるような演出や、色々と考えさせられる気持ちになるような描写は良く出来ており作品の雰囲気も悪くありません。
また不快感の強い内容ながらも、アクマで『第三者的な視点』で怖さを体験できるような構成で、エンターテイメントとしては面白く作られているのもなかなか好感触。
ただ。そういったドラマ重視の雰囲気映画的なテイストのため、全体的にお話がスローテンポで緊張感が薄めなのは残念なところですかね…
いわゆる『猟奇的な怖さ』やら『緊張感あふれるシリアルキラーもの』的なサスペンスのノリを期待していると、ちょっと肩透かしを食らわされてしまうかも?
あとラストも物凄くアッサリしてるので、物足りなさを感じてしまう人も居そうなのは評価の別れそうなところかなぁ…
総評としましては、社会ドラマ的なノリの強い「雰囲気重視のサスペンスホラー映画」って感じの内容ですね。
当時のドイツ情勢とかを中心に描いた独特のテイストの作品ですので、そういう社会ドラマ的なノリが好きであれば結構楽しめる内容ではないかと…
個人的には割と好きですが、不快感が強くて結構人を選ぶ内容で観る人を選ぶ作品だと思うので、そういうノリに興味があるようであればチェックしてみても良いかもしれません。