NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「CURED キュアード」(60点/サスペンス:結構オススメ)

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■■■「CURED キュアード」■■■
(60点/サスペンス:結構オススメ)


 アイルランドで、人間を狂暴化させゾンビ化させてしまう『メイズ・ウイルス』という新型ウイルスが発生。 国内は大混乱に陥ってしまう。


 それから6年後、ウイルスの治療法が確立されたことにより、社会は平穏を取り戻し、治療に成功した75%の感染者は『回復者』として社会に復帰することとなる。


 しかし『回復者』たちはゾンビだった頃の記憶を明確に持っており、回復者として医療機関に従事することとなったセナンも、肉親を殺した記憶のせいで激しいPTSDに悩まされていた。


 そんなさ中、健常者たちは『回復者』がまた狂暴化するのではないかと恐れて激しい差別を繰り返し、それに対抗して回復者たちは『回復者同盟』というデモ隊を結成し、社会には再び混乱が広がりつつあった…

 


 ゾンビウイルスが一時的に流行するも治療法が確立された世界で、回復者たちが激しいPTSDと差別に悩まされるなか、なんとかして社会復帰しようとするが…という感じの設定のゾンビウイルスを題材としたサスペンスホラー映画。


 ゾンビ映画ではあるものの、『ゾンビウイルスから回復した社会』を題材とした面白い切り口の作品で、ゾンビ要素は薄めで社会派要素が強めの内容の作品といった感じの内容です。


 日本でもハンセン病の患者への差別』やらは未だに話題になりますし、最近でも『新型コロナ感染者への差別』なんかが取り沙汰されたりしていますので、意外と身近な問題として感じられる部分の多い内容かも?


 お話としては『とある男性がゾンビウイルスの感染から回復し社会復帰しようとするんだけど、ゾンビだった頃の記憶によるPTSDやら感染者差別やらに悩まされるなか、政府によって「治療の見込みのない感染者の安楽死処分」が決定。自分たちも殺されるのではないかと恐れた回復者たちが「回復者同盟」というデモ組織を結成し…』みたいな感じの展開。


 感染者がゾンビだった頃の記憶を残しており『肉親や友人を手にかけてしまった事のPTSDに悩まされる』という設定はゾンビ映画としては斬新で、『もし現実に自分がそういう立場に立たされたら?』という事を考えると、なかなか恐ろしくも面白い切り口の作品という印象です。


 また、設定からしPTSDを題材としたサイコサスペンス映画』みたいなノリに仕上げてくるのかと思いきや、『健常者』による『回復者』への差別や迫害と社会的分断なんかがテーマとして描かれており、「ジョーカー」なんかでも話題になった『社会的分断』という最近のトレンドを取り入れているのも上手いですね。


 元感染者で真面目に社会復帰しようとする主人公に対して、差別や迫害に対して非合法な手段で立ち向かおうとする議員候補の友人との対比とかも面白く。

 他にも最後まで諦めずに治療不能法感染者を回復させようとする医師やら、主人公周りの脇キャラも良く立っており人間ドラマとしても見ごたえのある内容になっている印象。


 ただ人間ドラマがベースとなっているため、全体的に地味な展開が多くて、特に序盤は少しテンポの悪さを感じてしまう部分も…


 また前半のノリに対して、唐突にパニック映画的な展開に突入する終盤の展開の温度差が激しすぎてやや面食らってしまった部分もあったので、もうちょっと尺を長めに取って(強硬手段に訴えるまでの)差別とか社会的な分断とかをシッカリと描いた方が良かったかも?
 (治療不能者の回復を模索し続ける医師の話とか、ちょっと消化不良気味でしたし…)


 あと、ラストはちょっと中途半端な印象も受けたものの、人間の差別意識やら社会制度やらはそんなに簡単に改善されるものでもないので、『問題提起的な切り口』のフワっとした終わり方なのも、まあ悪くない落としどころではないかと…
 (むしろ、コロナ対策の『ニューノーマル』の社会の在り方について、考え直す良い機会になる作品かも?)

 


 総評としては、思った以上にマジメに作られた『なかなか良く出来た社会ドラマ的な切り口のパンデミック系サスペンス映画』という感じですね。


 ゾンビ要素に期待しているとちょっと肩透かしを食らうかもしれませんが、ゾンビウイルスを題材としたサスペンス要素やら社会派作品的な切り口は面白かったです。


 『ちょっと変わった切り口のゾンビ映画を探しているのであれば、チェックしておいても損はない一本かもしれませんよ。