■■■「アンダーウォーター」■■■
(55点/モンスター)
マリアナ海溝の深度約11,000mにある、深海資源の掘削を行う海底基地である『ケプラー基地』で働くエンジニアの女性ノラは、ある日、海底地震が原因と思われる謎の事故に遭遇。
基地の大部分は浸水と水圧による圧壊によって崩壊し、施設は致命的な損傷を被ってしまう。
大惨事をなんとか逃れた彼女は、同じように災害を生き延びたキャプテンたちと合流。
基地全体が間もなく水圧で崩壊すると分析した彼らは、なんとかして基地から脱出しようとするが、潜水艇も脱出ポッドも故障して動かない事が判明。
深海用の潜水服を着て、決死の覚悟で近くのローバック基地まで海底を歩いての移動を試みるが、彼らの掘削作業は深海の更に奥に潜む『恐るべき存在』を眠りから呼び覚ましていたのだった…
深海の掘削作業によって海底の奥深くより謎の生物が呼び覚まされ、事故によって崩壊した海底基地の作業員たちを襲う…という、海洋ものモンスターパニック映画。
海底基地を舞台としたモンスターパニック映画と言えば、『海底基地版物体X』とも言える「リバイアサン」という佳作ホラー映画がありますが、本作は言わば『海底基地版エイリアン』といった感じの作品ですね。
初っ端の映像やら演出、美術デザインとかからして、思いっきり「エイリアン」の影響を受けている雰囲気が感じ取られるような作品で、登場するモンスターも幼体はまんま『チェストバスター』ですし、成体もほぼ「エイリアン: コヴェナント」の『ネオモーフ(白いエイリアン)』の親戚みたいなデザインなので、色々な意味で『海底基地版エイリアン』が撮りたかったんだろうなぁ…というのは良く分かる印象。
ただ映画の完成度としては『海底基地版エイリアン』を名乗るにはちょっと微妙な出来で、本作が『動画配信サービスのみでの公開』となった理由も何となく分かるような内容なんですよね…
大手である『20世紀スタジオ』が制作しているだけあって、特撮やら映像は非常にシッカリと作られており、海底基地のスケール感とか光の届かない深海の異様な雰囲気とかがなかなか良く出来ているのは良い感じ。
『ほぼ真っ暗の深海を徒歩で進んでいく』というシチュエーションもブレアウィッチ的な閉塞感や不安感があって不気味で良い感じですし、割と定期的に見せ場となるようなシーンもあって、そこそこ盛り上がる展開なのも悪くありません。
という感じで、部分部分を見ると悪くなさそうな印象なのですが、本作の何が微妙って、とにかく『最近の映画にしてはモンスターの出し惜しみが酷い』ということ。
特撮に力を入れている雰囲気の割には『どんだけ引っ張るねん!?』というぐらいに、終盤までモンスターが登場しなくて流石にちょっとイライラしてしまいました。
散々引っ張った割には登場したモンスターが、海底基地が舞台の割にはあまり深海生物っぽさがなく、むしろまんまヒューマノイド体形の「ネオモーフ」っぽすぎてデザインに面白味が感じられないのは困りもの。
「エイリアン」をリスペクトしたのか…もしくはネットミームの「ニンゲン」をモデルにした可能性もありますが、流石にモンスターのデザインにはもうちょっと個性を持たせた方が良かったのでは?という印象を受けてしまいました。
(同じような舞台を描いた「リバイアサン」やら「ザ・デプス」なんかは、深海の異形生物っぽいモンスターデザインで、その辺を上手くやってたのに…)
また見せ場が定期的にある割には、無駄にダラダラしたシーンが長めで中だるみが強めなのも残念なところ…
あと、キャラクターも全員が『宇宙服のようなゴツイ潜水服』を着て行動するためにキャラの個性が分かりにくくて、『え、あの人、死んでたんだ?』みたいな感じで、イマイチ盛り上がりに欠けるのも難点かなぁ?
ラストの展開だけは、ちょっと予想外で盛り上がりましたが、オチもコテコテすぎるのでもうひと捻りあっても良かった気がしますよ…