■■■「プラットフォーム」■■■
(50点/サスペンス)
ゴレンは、とある社会実験に参加する事となり、目が覚めると自分が部屋の真ん中に「穴」の空いた巨大な建物の48階層に居る事に気付く。
その建物は、真ん中の「穴」を『プラットフォーム』と呼ばれる台座が下に向かって移動しており、供給される食料はその台の上に置かれたもののみ。
下の階層の人間は上の階層の人間の『食べ残した残飯』を食べるしかなく、上の階層の人間が食料を食べつくしてしまうと下の階層の人間は飢えるしかなく、更に1ヶ月おきに上の階層と下の階層のメンバーが入れ替わるという奇妙なルールが採用されていた。
6ヶ月間この場所で過ごす事となったゴレンは、以前から建物で暮らしているという同室の老人・トリマガシからここで過ごすためのルールの説明を受けるが、そんなある日、自分の『息子』を探してプラットフォームに乗って階層を移動し続けているというミハルという女性と出会ったことから、この建物のみんなが生き残るための奇策を思いつくが…
巨大な『穴』を上から下へと移動する一方通行の『プラットフォーム』で食料が供給されるという奇妙な施設で過ごすこととなった男が、なんとかしてそのルールの中で生き延びようとする…という不条理系サスペンス映画。
奇妙な建物に閉じ込められた主人公が、その場所でなんとかして生き延びようとする…というと、一見すると「CUBE」のようなワンシチュエーションスリラー系のサスペンス映画に見えますが、実際の中身の方は暗喩やら風刺やらの意味合いの強い『社会風刺映画』的な感じの内容の作品です。
お話の舞台は、各フロアの真ん中に巨大な穴があき、その場所を『プラットフォーム』と呼ばれる『上から下へと一方通行で移動する台座』が移動している奇妙な建物。
食事の際には、台座の上に大量の料理が満載されて降りてくるんだけど、下の階の人間は『上の階の人間が食べ残した残飯』しか食べる事が出来ず、上の階の人間が料理を食べ尽くしてしまうと下の階の食べるものが無くて人間は飢えに苦しむ事となり、下の階層に向かうほど『同室の人間を殺してでも食料にする』といったような犯罪行為が平気で行われる無法地帯になっていく…といった感じの設定です。
一見シチュエーションスリラーっぽいのですが、コレって現在の『資本主義社会』をそのまんま比喩しており、上の階の人間(富裕層)がトリクルダウンを行わずに食料(富)を(中抜きやら搾取やらで)独占してしまった場合に、下の階層の人間(貧困層)が貧困に苦しむ事となる…という、資本主義の社会構造そのものですよね。
作中でも『上位の者たちが富を独占してしまった社会』が暗喩的に描かれて、資本主義における富裕層と貧困層の社会的隔絶やらトリクルダウン問題やらを風刺した内容となっており、現代の日本でも馴染みの深い問題を描いた作品になっているという印象。
ただ風刺作品として良く出来ているからといって、本作がエンターテインメントとして優れているかと言われると微妙なところ…
主人公たちは、何かの『権利』を得るために志願してこの建物に入っていたり、犯罪者として収監されている…みたいな設定ではあるのですが、流石にこんな訳の分からない食料配給のシステムは社会実験としても非現実的すぎてリアリティが全く感じられません。
作中で、主人公たちが飢えて同室のメンバーと殺し合いに発展したり、絶望して穴から身を投げるものが居たり…といった具合に、色んなシチュエーションを盛り込んで退屈しないように頑張っているものの、そもそもの設定に現実味が無さすぎるため、いま一つ緊張感が感じられずにどうにも盛り上がりに欠けるのは困りものです。
終盤の展開も、『主人公が下層の人間を救おうと奮起する(社会構造の見直しのために戦う)』という展開は意外性があって面白いのですが、ラストの展開も『結局、何がやりたかったんだよ?』みたいな感じのオチになってしまっており、ストーリーとしては消化不良な終わり方になってしまっているんですよね…
確かに『風刺としてのメッセージ性』はシッカリと伝わるのですが、ホントに『風刺のために作られたストーリー』といった感じで設定に色々と無理のある部分が多く、作品として面白い内容になっているかと言われると、やや疑問の残ってしまうような映画でしたよ。
総評としましては、凝った設定の『社会風刺系シチュエーションスリラー映画』って感じの作品です。
シチュエーションとかも割と面白いですし、映像センスなんかも非常に良いですので、社会問題やら政治的な話を皮肉った『社会風刺ネタ』が好きであれば、まあまあ楽しめる一本ではないかと…
逆に、そういった社会風刺ネタが鼻につきすぎる部分もあるので、そういうノリがあまり好きでない人や、純粋にサスペンススリラー映画を楽しみたいという場合には、やや肌に合わない作品かもしれませんので、そういう場合は要注意かも?
(自分は、風刺のテーマ性が強すぎてちょっと鼻白んでしまいましたよ…)