NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ザ・タワー」(40点/サスペンス)

■■■「ザ・タワー」■■■
(40点/サスペンス)


 様々な人種の多くの人々が暮らすフランスの巨大団地で、ある朝に住民たちが目を覚ますと、団地の外が正体不明の『闇』に包まれている事に気づく。


 『闇』はものを投げ入れると消滅し、身体が触れるとその部分が刃物で切り取られたように無くなってしまい、住民たちは脱出不可能な状態に陥ってしまう。


 外界との連絡も取れないまま巨大な団地に閉じ込められた住人たちは、食料の不足する極限状態のなか、やがて人種同士でグループを作り反目しあい対立しあうようになっていくが…

 


 正体不明の『闇』によって巨大な団地に閉じ込められた住民たちの取る『選択』と運命を描いた、SF風味のサスペンススリラー映画。


 設定だけ聞いて、なんとなく『怪物の登場しない「ミスト」みたいな話かな?』と思って観てみたのですが、なんかもっと抽象的な『人種問題とか死生観のメタファー(暗喩)』的なものを題材にした、社会風刺系の雰囲気映画的な作品でした。
 (方向性的には、フランスの社会問題とかを題材として風刺した感じの内容なのかな?)


 お話としては、『謎の『闇』によって巨大な団地に閉じ込められた住民たちの陥るパニックとサバイバル』を描いたシチュエーションスリラーっぽい設定なのですが、正体不明の『闇』はアクマで味付け程度の設定で、お話のメインは『極限状態に置かれた様々な人種の住民たち』を描いた『群像劇』がメインといった印象。


 てっきり『謎の闇から脱出すべく力を合わせていく』みたいな展開になるのかと思いきや、そういった描写は一切無くて、住民たちが人種同士でグループを作って徐々に反目しあうようになっていく様子が力を入れて描かれており、現代社会の人種問題のメタファーというかカリカチュアみたいなものが描かれていく感じです。


 『極限状態でのサバイバル』から『人種問題』へとお話が展開していく辺りは、いかにも様々な人種問題を抱える欧州の映画らしい設定ではあるのですが、逆にほぼ単一人種の国家で、あまり人種問題を抱えていない日本人から見るとどうにも実感の湧きにくいテーマではありますね。


 お話の冒頭で描かれる謎の『闇』に関しては、アクマで単なる『舞台装置』という感じで、『団地から脱出不可能になる』という以上の設定はほぼ一切語られません。


 そもそも『闇』によって脱出や外界との接触が不可能となり極限状態に置かれていく…という設定の割には、『食糧問題』は作中で語られるものの、もっと即座に問題になりそうな『飲料水』の問題やらはサラっと流されて居たり(一応、リサイクルして飲んでるみたいな設定はちょっとだけ語られる)、何故か電気やガスは使えるままだったりと、全体的にアバウトな部分が多すぎ…


 監督の描きたいのは『人種間の対立』的な部分で、その部分は監督の描きたいテーマではないという事なのでしょうけど、それにしても基本設定に中途半端な部分が多過ぎて、どうしても気になってしまいます。


 また『群像劇』をメインとしている事もあってか、明確な『主人公』のような人物が設定されておらず、お話がどの方向に着地したいのかも良く分からないため、観ていてどうにもモヤモヤしてしまうのも困りもの。


 加えて『極限状態』といいながらも、たいした事件が起こらないままにダラダラと時間だけが経過していく展開が続くため、なかなかお話が進まなくてとにかく退屈です。


 ラストも、死生観のメタファー的なものは描かれるものの、『なんのこっちゃ』といいたくなるような投げっぱなしなオチですし、雰囲気映画というほどに抽象的な作風でも無いため、どうにも中途半端さを感じる作品でしたよ…

 


 総評としましては、『色んな意味で『なんじゃこりゃ?』と言いたくなるような、どうにも評価しづらい作品』というのが正直なところです。


 社会風刺とか暗喩とかが好きな人には楽しめる内容なのかもしれませんが、自分的にはいま一つピンと来ない部分が多くて、ちょっと楽しみ方の分からない作品でしたよ。


 たぶん『好きな人は好きなタイプの映画』だと思うので、そういう方向性の作品に興味がわいた人は、チェックしてみても良いのではないでしょうか?