■■■「プロトタイプA 人工生命体の逆襲」■■■
(55点/サスペンス)
人間社会の中にアンドロイドが溶け込んで暮らす近未来のカリフォルニア。
奇妙な体調不良に悩まされる高校生のアイシャは、ある日、泥酔して腕を怪我した拍子に自分の体内の機械部品が露出し、自分が人間ではなくてアンドロイドだという驚くべき事実を知る事となる。
父と幼い頃からの専属医であるシャロンに真実を問い詰めたところ、彼女は巨大ロボット企業で開発された人間と見分けのつかないレベルの違法な最新鋭のアンドロイドで、彼女の両親と極一部の人間のみが知る極秘プロジェクトとして『人間として育てられていた』という驚くべき事実を知る事となる。
衝撃の事実に人間不信に陥った彼女は、友人たちの助けを得て両親のもとから逃亡。
『本当の自分』とは何かを探して、自分の身体と自分の過去に秘められた秘密を探り始めるが…
人間とアンドロイドが共存する近未来世界で『人間として育てられたアンドロイドの少女』が、自分の作られた目的や真実を解き明かそうとする…という、ジュブナイルSF系サスペンス映画。
タイトルだけ聞くと、なんとなく「ブレードランナー」のようなハードなサイバーパンクSFっぽい内容を想像してしまいますが、どちらかというと『ジュブナイル系の青春』ものというか『ティーン向けSF作品』というテイストの強い作品ですね。
実際のところ『ジュブナイルSF作品』としては割と良く出来た内容とも言えるような映画なのですが、予告やタイトルから受けるイメージとあまりにもかけ離れた内容のため、なんとなく『タイトル詐欺』を喰らわされた気分になってしまうような映画なのは困りもの。
お話としては『とある事故を切っ掛けに自分が「人間に偽装して育てられた超高性能のアンドロイド」であるという知った少女が、データ消去「本当の自分」を探して仲間と共に逃亡生活を続ける』みたいな感じのお話。
設定から分かる通り人間ドラマ的な要素が強い作品で、『人間とは何か』とか『自分とは何か』といったものをメインテーマとしてドラマが掘り下げられていく感じです。
そういった設定のため、主人公や主人公の両親、友人関係といった部分のキャラの掘り下げやら人間ドラマとしての設定は非常にシッカリしており、とにかく人間ドラマ部分の比率の高いお話と言った印象。
更に加えて、親子問題やら人種問題、ジェンダー問題といった部分までお話のテーマとして盛り込まれているような内容になっており、B級映画としては流石に重すぎてちょっと胸やけしてしまうレベル。
2時間強と長めの尺の作品ではあるのですが、上記テーマに加えて時系列が前後する『主人公の過去のエピソード』とかまで出てくるせいで、流石にゴチャゴチャしすぎて妙に分かりにくいお話になってしまっているのは困りもの。
そういった重めのドラマが、アクションシーンとかの盛り上がるような要素も無いままにダラダラと描かれるため、どうにも冗長に感じてしまう内容になってしまっているんですよね。
お話やら描きたいテーマやらはそこまで悪くないと思うので、いっそのことお話をもう少し膨らませて、TVシリーズの4話ぐらいの構成で作った方が見やすい作品になったんじゃないかなぁ…
総評としましては、全体的な出来は悪くは無いものの『ちょっと観ていて疲れるタイプのジュブナイル系SFサスペンス映画』って感じですね。
妙にテーマが重いうえに説教臭さが鼻に付いてしまう部分もあるので、ちょっと観る人を選ぶ作品という印象です。
少なくとも『人工生命体の逆襲』ってタイトルに惹かれて観るような作品じゃない事は確かですね。(そもそも『逆襲』要素とか全くないですしね…)
むしろ、そういった『自分探し』とかの人間ドラマ的な要素の強いSF作品とかが好きな人であれば、まあまあ楽しめる内容かもしれませんので、そういう要素が気になるのであればチェックしておいても良い一本かもしれませんよ。