■■■「哭悲/THE SADNESS」■■■
(65点/パニック:結構オススメ)
近未来、台湾では国内で『アルヴィンウイルス』と名付けられた謎のウィルスによる感染症が流行。
軽い風邪のような症状を引きおこすそのウィルスは、狂犬病と類似した変異を起こすという危険性を指摘されながらも、人々の間ではその危険性は軽視されて国内へ蔓延しつつあった。
そんなある日、ウイルスは医師たちの予想どおりに変異を起こし、感染した人々が唐突に狂暴化し街中で一斉に暴れだすという事件が発生。
感染した人々は、狂気に駆られて周りの人々を次々と虐殺しながら更に感染を広めていく。
若いカップルのジュンジョーは、仕事のために街へと向かった恋人のカイティンがパニックに巻き込まれて病院に逃げ込んでいると知り、彼女を救うために狂気に駆られた感染者たちの蔓延した街へと単身で向かう事となるが…
正体不明の新型ウイスルに感染した人間が狂暴化、大パニックに陥った街から若いカップルが脱出しようとする…という、サバイバル系のパニックホラー映画。
最初に「哭悲」ってタイトルを聞いた時に、2016年に作られた「哭声/コクソン」って映画の関連作品かと思ったのですが、あちらは韓国映画なのに対してこちらは台湾映画ですし、オカルトとパニック映画とジャンルも異なっており、タイトルは似てるけど内容的には全く関係の無い作品でした。
お話としては『台湾の国内で謎の新型ウイルスが流行し、そのウイルスに感染した人間が狂暴化して他の人間を次々と襲い始める』といった内容で、基本的にはゾンビ映画のプロットに沿った作品という印象。
ノリとしては台湾版「28日後...」というか、台湾版の「クレイジーズ」みたいな映画といえば割と伝わりやすい感じかも?
パニックに陥った街で離れ離れになった2人の若いカップルが主人公として描かれており、なんとかしてパニックを逃れて合流しようとする2人が、それぞれに行く先々で『狂気の感染者』の集団に襲われるというゾンビ映画的な展開なのですが、実際の中身の方は想像以上に『パンチの強い映画』というのが正直な感想。
なにが『パンチが強い』って、この『狂気の感染者』たちがとにかくエグい。
『狂気の感染者』が血まみれで満面の笑みを浮かべながら、手に手に得物を持って全力で追いかけてくる絵面がメチャクチャ怖いですし、襲撃方法も切る刺す噛みつくといった血みどろ描写のオンパレード。
体感的には『作中の半分ぐらいは残虐シーンなんじゃないか?』ってぐらいに残虐シーンが多いうえに、この描写がゴア映画に良くありがちな『笑えるようなメチャクチャなスプラッタ描写』ではなくて『微妙にリアリティを感じさせる痛そうな残虐描写』が多いせいで、観ていてとにかくキツいです。
更には、本作では『暴力性』だけじゃなくて『性欲』も暴走の対象になっているため、単純なゴア描写だけじゃなくて変態チックな描写やや集団レイプ的な描写なんかもあって、そちらも含めてエグさが倍増。
グロ映画が特に苦手じゃない自分が観ても、ちょっと『ウェッ』となるようなシーンも割とあったりするので、とてもじゃないですが『グロ映画が得意じゃない人』にはオススメできない内容です。
ただ、『狂気の暴走』による怖さというのは物凄くパワフルに描かれており、近年まれに見るレベルの『強烈なグロ映画』となっているので、そういうのが苦手じゃない人であれば一見の価値のある映画という印象。
作品のテンポも非常によく、感染者たちによる襲撃シーンが手を変え品を変えて次々と描かれていくので、とにかく観ていて飽きない作りなのは良い感じ。
ただ前述のとおり、体感的には残虐シーンが全編の半分ぐらいあるみたいなイキオイですので、自分は途中でお腹いっぱいになって『もういいわ…』って気分になってしまいました。(笑)
あと作品のテンポは良いのですが、作中での『着地点』がなかなか見えてこないため、観ていてちょっとモヤモヤしてしまう印象があったのは気になるところかなぁ?
ラストも、ゾンビ映画にありがちな割と投げっぱなしで後味の良くない終わり方なので、その辺も評価の別れる部分かも…
総評としましては、とにかくエグい内容の『パンチの効いたサバイバル系パニックホラー映画』って感じの作品ですね。
『狂気の集団と強烈なゴア描写』を描いた映画としては、数年に1本出るようなレベルのインパクトのある怖い内容ですので、そういう方向性の作品に興味があるのであれば、チェックしておいて損は無い一本だと思います。
逆に『グロいのとかエグいのはそこまで得意じゃないんだけど』みたいな人が観ると、トラウマを抱えかねないような酷い映画(誉め言葉)ですので、そういうのが苦手な人は観ない方が良い作品かもしれませんよ…