■■■「ドゥー・ユー・ライク・ヒッチコック?」■■■
(50点/サスペンス)
ヒッチコックのファンである映画学科の学生のジュリオは、幼い頃に負ったトラウマの影響から『他人の生活を覗き見る』という奇妙な性癖を趣味としていた。
そんなある日、向かいのビルの住人であるサシャという女子学生の母親が、何者かに撲殺されるという殺人事件が発生。
サシャがヒッチコックのファンだと知ったジュリオは、事件の「見知らぬ乗客」という映画との類似性から、彼女がこの映画を模倣した『交換殺人』を計画しているのでは無いか?と疑いを抱くようになっていくのだった…
イタリアンホラーの巨匠である、ダリオ・アルジェント監督によるサスペンス映画。
タイトルやストーリーからも分かるように、映画の内容が非常にアルフレッド・ヒッチコックを意識して作られた作品で、カメラアングルや演出なんかもいかにも『ソレっぽく』て、流石はヒッチコックのファンであるアルジェント監督だけの事はあるな…って感じです。
ストーリーも「裏窓」や「見知らぬ乗客」といった名作のオマージュとなっており、ファンならばソレだけでもニヤリと出来る部分でしょう。
…が映画の内容としてはしごく普通のサスペンス映画で、とにかく良くも悪くも『普通』の作品です。
元々、イタリアのTV向け映画として製作された映画らしいのですが、内容はアルジェント監督にしてはムチャクチャおとなし目で、お得意の変態チックな『アルジェント節』は殆ど感じられません。
まあ本作はTV向け作品だけあって、ターゲットが『ホラーファン』ではなく『大衆向け』として撮った作品と言う事なのでしょうが、『ホラー映画監督としてのダリオ・アルジェント』が好きな人間から見ると正直言って何とも物足りない内容ですねぇ…
作品そのもののテンポとかも悪く無いですし、ストーリーもそこそこ楽しめるレベルで、普通にサスペンス映画として観た場合は、決してツマんないという訳では無かったのですが…
何か、いかにも『サスペンス劇場』的なノリの作品のため、ライトなサスペンス映画を観るつもりならばそこそこ楽しめるとは思うのですが、『アルジェント監督の新作』という事で意気込んで観ると、ぶっちゃけ肩透かしも良い所でしょう。
総評としましては、なんとも『普通』な内容の『フツーのサスペンス映画』です。
暇つぶしに、『適当なサスペンス映画』を観てみたいというならば、その期待には沿えるレベルだとは思いますが、アルジェント監督のファンが往年の『アルジェント節』を求めて観るとしたら、余り観る価値は無いかも?
アルジェント監督の作品じゃなければ『良い意味でも悪い意味でも普通のサスペンス映画』としたと思いますが、アルジェント監督の作品として観ると『ネガティブな意味で普通の映画』とせざるを得ないかなぁ…