■■■「リビング・デッド サバイバー」■■■
(50点/モンスター)
コミュ障であるサムは、元カノから私物を返してもらうために彼女のアパートで開催されるパーティに訪れる。
人が苦手な彼は人の居ない奥の部屋で彼女の時間が空くのを待つこととなるが、待っている間にうっかり寝入ってしまうが、翌朝に目を覚ますと、アパートのそこらじゅうの壁が血で染まり乱闘でもあったようなような荒れ果てた状態になっている事に気づく。
外の様子を確認すると、彼が眠っている一晩の間にソンビウィルスによるパンデミックが発生し、街は既に壊滅してそこらじゅうにゾンビが徘徊している状態だと判明。
彼は混乱しつつも他の生存者や食料や使えそうなものを求めて、アパートの内部の捜索を開始するが…
ゾンビウィルスのパンデミックからただひとり生き残った若者が、アパートの一室でゾンビの襲撃を逃れてなんとか生き延びようとする…という、シチュエーションスリラー系のモンスターホラー映画。
フランス製のゾンビ映画のようですが、欧州ホラーだからとかどうとか言う以前のレベルでの独特の雰囲気と世界観を持った作品ですね。
何が独特って、なんというかコレ以上に無いレベルで『何もしないゾンビ映画』だという事。
『主人公がどこかに閉じこもっているうちに外の世界がゾンビだらけになっていました』というのは、割とありがちなゾンビ映画のシチュエーションなのですが、その後に主人公の青年がとにかく何もしません。
生き残ったのが主人公一人のみなので、とりあえずアパート中の食料やら武器やらを集めて一室に引きこもるのですが、殆どのシーンが『ひたすら窓の外を眺めているだけ』という内容。
もともとコミュ障気味の主人公なので、積極的に生存者を探しに行動を起こしたりもしないですし、食料も比較的豊富にあるので屋外への探索へも向かわずに『ひたすら部屋でダラダラとしているシーン』が延々と描かれます。
まさに『引きこもりゾンビ映画』という新たなジャンル映画とでも言いたくなるような内容です。
まあ流石に引きこもっているだけではドラマとしてなりたたないので、お話としては主人公が『孤独に耐えかねて徐々に精神的に追い詰められていくのを、なんとか気晴らしして誤魔化そうとする』みたいな様子が描かれており、基本的には心理ドラマが中心といった感じの展開。
孤独によるストレスから、エレベーターに閉じ込められたゾンビに話しかけてみたり、気まぐれに窓際でドラムを連打して観客替わりにゾンビを集めてみたり、そこらにあるコップや家具を楽器にしてパーカッションパフォーマンスを披露したりと、コミカルだけどどこか寂しい感じの様子が描かれるのはなかなか面白いですし、軽めで変わり者なノリの主人公のキャラクターも良く立っています。
また、実際のところこんな方向性のゾンビ映画は観た事が無いので、なかなか新規性があって個性的で面白い作品ではあると思います。
…と思うのですが、いかんせんお話に起伏が無くてとにかくダルい映画というのも正直なところ。
ゾンビがオールドタイプの運動神経のあまり無い類のゾンビなので、アパートの上部の階層に引きこもっている主人公がピンチに陥るような局面も殆ど無いですし、とにかく見せ場が無くて退屈です。
そもそも、いくら一晩で街が壊滅したとしても救助の部隊とかが全く来ないのも不自然ですし、主人公がTVやラジオで状況を全く確認しようとしないのもおかしいですし、マトモにツッコミを入れるならばゾンビ映画としては色々と無理がある設定という感じ…
どちらかというと、『ゾンビのあふれる外の世界』やら『アパートの一室のみの閉じられた世界』というのは人間心理的なメタファーで、外の世界に踏み出せない主人公の心理を描いた雰囲気映画的なノリのお話なのかな…というのが正直な感想でしたよ。
(実際にソレっぽい雰囲気のシーンも多くて、ゾンビ映画やホラー映画としてみるとオチも矢鱈と中途半端な感じでしたし…)
総評としましては、どうにもソンビ映画として評価するなら『雰囲気は悪くないものの地味で退屈なテイストのゾンビ映画』という感じの作品です。
ただ、普通にゾンビ映画として観ると退屈すぎてどうしようもないような内容なのですが、個性的な作品の方向性の心理ドラマやら人間ドラマ的なノリの作品として観ると、そこそこ観れる内容の作品かなぁ…という印象。
そんな感じなので『普通のゾンビ映画』を観たい人にはオススメはしませんが、独特の個性や方向性を持った『個性的なゾンビ映画』を求めているのであればチェックしてみても良いような作品かもしれませんよ。