■■■「透明人間」■■■
(60点/サスペンス)
光学研究の第一人者で富豪の科学者であるエイドリアンの恋人のセシリアは、DV気質で異常なまでに彼女を拘束したがるエイドリアンから逃れるために、ある日、彼に睡眠薬を飲ませて彼の屋敷から逃亡する。
それから2週間後、親友のジェームスとその娘のシドニーの家に居候していた彼女の元に、エイドリアンが手首を切って自殺した事から『遺産の一部を彼女が相続する権利がある』という通知が到着。
元恋人の死にショックを受ける彼女だったが、しかしそれ以降に彼女の周りで『誰か監視されているような感覚』や、『目に見えない何者か』が彼女に嫌がらせをしているとしか思いえない奇妙な現象が頻発するようになっていく。
繰り返される異常な事態に、彼女は『エイドリアンが実はまだ死んでおらず、光学研究を応用した「姿が見えなくなる装置」を使って彼女に嫌がらせを繰り返しているのではないか』と猜疑心を抱くようになっていくが…
DVでストーカー気質の天才科学者と別れ要素した女性が、『透明人間』となった恋人によって激しい攻撃を受ける…という、SF風味のサスペンススリラー映画。
佳作スリラーやホラー映画でおなじみの「ブラムハウス」による、透明人間を題材とした新作のサスペンス映画ですが、ぶっちゃけ『透明人間』という題材でどんだけリメイク作品が作られてるんだ…って感じではあるものの、流石に「ブラムハウス」が制作して「ソウ」のリー・ワネルが監督しているだけあって、なかなかに良く出来た作品になっています。
透明人間となった科学者が『サイコパスの殺人鬼』という設定は本作でも健在で、姿を消したままひたすら嫌がらせを繰り返す『ストーカー科学者』の陰湿っぷりはなかなかに良い感じ。
主人公が『ストーカー科学者』による嫌がらせを訴えるものの、周囲の人間からは『彼女自身の被害妄想』だと思われて、徐々に孤立して逆に窮地に陥っていくという流れもオーソドックスながらも良く出来ています。
(まあ『透明人間』になるという凄い科学技術を応用して、やる事が『元カノへのストーカー』かよ…というツッコミはありますが。(笑))
また、ヒロインの見えない相手に対する鬼気迫る演技や、透明人間と乱闘するシーンの演出なんかも、非常に気合が入っていて迫力があるのも良い感じ。
『心理サスペンス』っぽい前半の導入パートに対して、急展開でハイテンションなスリラー展開に突入していく中盤以降の流れも良く出来ており、なかなか先が読めなくて面白いです。
また、科学者が『透明人間』になるギミックに関しても、『ナノテクノロジーとプロジェクションマッピングを用いた特殊スーツ』みたいな感じの、キチンと現代の最新技術を応用したものにアップデートされており、この『透明化スーツ』が不気味さとカッコ良さを併せ持つようなデザインになっているのも好印象。
この『透明人間』が暴れ回るアクションシーンなんかも、予想以上に派手で楽しませてくれます。
ただ良い感じに仕上がっている部分は多いのですが、本編の尺が2時間強もありやや尺が長めで、ちょっとテンポの悪い部分が散見されるのは残念なところ。
全体的にもうちょっとシェイプアップした方が、お話の流れのテンポが良くて良かったんじゃないかなぁ…
また、尺が長い割には微妙に掘り下げ不足な部分も見られ、特にヒロインがどうして『ストーカー科学者』に精神的に追い詰められていたのかとかの部分があまり説明されてないせいで、ちょっと『ヒロインへの感情移入度』が低くなってしまっているのは気になる部分かも?
あと、ややネタバレになりますが『微妙にブラックな感じのオチ』も、人によって好みの別れそうなところかも?
それから割とどうでもいい部分ですが、いくら透明スーツを着たからといって、そこまで体格に優れる訳でも無い科学者が『大の男たちを一撃で昏倒させる』のは無理があるだろ…って気がしたのは自分だけですかね?
総評としましては、やや物足りなさも無くはないものの『まあまあ良く出来たサスペンススリラー映画』という感じですね。
『透明人間』という題材自体がやや使い古された感はあるものの、今風のネタへのアレンジの仕方も上手いですし、リー・ワネル監督らしい微かに見える悪趣味さも良い味付けになっています。
ともあれ普通に面白いサスペンス映画ではあるので、ネタとして気になるようであればチェックしておいても損は無い一本ではないかと…