■■■「ダークグラス」■■■
(55点/サスペンス)
イタリア・ローマで娼婦ばかりを狙った連続殺人事件が発生。
4人目のターゲットとして狙われたコールガールのディアナは、殺人鬼に車で執拗に追跡されたうえに後ろから激突されて大事故を起こしてしまう。
なんとか一命は取り留めたものの、事故で両目の視力を失った彼女は、同じ事故で両親を亡くした中国人の少年チンと意気投合。
彼の両親を殺してしまった責任感もあり、彼を引き取って彼のサポートを受けながら同居生活をする事となる。
しかし彼女を狙うストーカー殺人鬼は、事故を生き延びた彼女を今度こそ殺害しようと忍び寄って来ていたのだった…
殺人鬼に襲われて事故にあい両目の視力を失ったコールガールの女性が、ストーカー殺人鬼に執拗に命を狙われる…という、サスペンススリラー映画。
サスペンスホラーの巨匠であるダリオ・アルジェント監督の10年ぶりの新作ですが、流石に全盛期のようなキレ味やケレン味は亡くなったものの、十分に普通に楽しめるレベルのサスペンススリラー映画とはなっています。
『目の見えない女性が殺人鬼から狙われる』と言えば「暗くなるまで待って」辺りで有名なシチュエーションですが、流石はアルジェント監督だけあって単純な類似作品にはなっていないのは良いところですね。
いわゆる月並みなストーカー殺人鬼ものではなく、『ストーカーの被害者と事故に巻き込んで両親を死なせてしまった中国人少年』との絡みがあったりして、やや一筋縄ではいかない感じの設定になっているのはアルジェント監督らしい変化球という感じ。
また『目の見えない女性』が主人公のサスペンスではありながらも、方向性としては『少年と主人公の女性のバディもの』的なテイストの作品になっているのは、ちょっと意外性があって面白いです。
他にも、殺人鬼が犠牲者を襲う時にワイヤーで首を斬ったりと、ちょっとエグい感じの描写がある辺りや、妙に安っぽい効果音とかライティングの演出がある辺りも、あいかわらずのアルジェント節という印象。
(あと、娘のアーシア・アルジェントもチョイ役で出演しています。)
ただ、サスペンス映画としてはテンポも良く悪くない作りではあるのですが、全体的に盛り上がる要素が薄くて昔のようなアクの強さやケレン味も感じられないために、非常にアッサリとした印象の映画になってしまっているのは残念なところ。(ラスト辺りでちょっとしたグロ成分がありますが…)
なんとなくTV映画っぽい雰囲気の作品ですし、もしかしたら放送局の意向とかもあってそこまでアクの強い内容には出来なかった感じなのかなぁ?
あと終盤辺りで、主人公たちが湿地帯で『蛇の巣』に足を踏み入れて蛇の群れに襲われるというシーンがあるのですが、あのシーンが一番『ダリオ・アルジェント監督らしい趣味に走ったシーン』なのは分かるものの、ぶっちゃけ本編に全然関係ないシーンなので『そのシーン、別に要らんかったやろ?』とツッコミを入れたくなったのは自分だけですかね?(笑)
総評としましては、ちょっと地味な印象ではあるものの『普通に楽しめるレベルのサスペンススリラー映画』という感じですね。
ダリオ・アルジェント監督の新作という事で、過剰な期待をしていると肩透かしを食らうかもしれませんが、まあサスペンスとしては無難な完成度で観れる内容になってはいます。
強くオススメする程では無いですが、サスペンススリラー映画としては悪くない出来の作品ですので、気になるようであればチェックしておいても損は無い一本だと思いますよ。