■■■「スキン・コレクター」■■■
(65点/サスペンス:結構オススメ)
老化を恐れる若きピアニストのキラは、ある日、自分の指先の皮膚が白くボロボロになって崩れたようになってきている事に気づく。
症状が徐々に広がりつつある事から病院に行って相談する事になるが、原因不明で効果的な対処法も無いままに症状が広がっていくなか、彼女は同じアパートの隣人のソフィアに悩みを相談。
親身になってくれる彼女と徐々に惹かれあうようになっていく。
そんなある日、他の女性の皮膚を自分の崩れた皮膚に貼り付けたところ、新しい皮膚として定着する事を発見した彼女は、死体安置所から皮膚を盗もうとするが、死体の皮膚では上手くいかない事が判明し…
『全身の皮膚が崩れてボロボロになっていく』という謎の症状に悩まされる女性が、他の女性を殺害して皮膚を奪おうとする…というサスペンススリラー映画。
『自らの美しさを保つために他の女性を殺害して皮膚を奪う』という設定を聞くと、古典ホラーである「顔の無い眼」をなんとなく思い出しますが、その他の部分も含めてなんとなく少し懐かしいホラーを連想させるような雰囲気の作品ですね。
特に影響を顕著に感じさせるのが、80~90年代のダリオ・アルジェントやらブライアン・デ・パルマといった監督のもので、映像表現やら美術のセンスやらにソレっぽい味わいを出しています。(矢鱈と原色のライティングとか…)
また、ヒロインが美しい女性の裸から皮をはぎ取って自分の身体に貼り付けたり、隣人とのレズビアン的な絡みがあったりと、なにかとフェティッシュな要素が強く、なんとなくアルジェント節に似たテイストが感じられるので、もしかしたら『アルジェント監督とかのファンで、そういうノリをリスペクトしてるのかな?』という印象。
作風だけでなくストーリーもサスペンスとしてなかなか凝った構成になっており、表題にもにもなっている『美しさを保つために殺人を繰り返し皮膚を集める女性』という単なるスリラー的な展開だけではなく、軽度の記憶喪失に陥っている主人公が徐々に自分の過去に起こった『秘密』を解き明かしていくという謎解き的な流れなんかも仕込まれており、そちらもなかなか良く出来ています。
更に加えて、主人公のレズビアン的な恋愛模様なんかもうまく盛り込まれていたりして、色々と観ていて退屈させない作りになっているのは良い感じ。
また、それらの要素をガッツリと詰めこんでいる割には、あまり難解にならずに分かりやすくお話がまとめられているのも上手いです。
ただ、中盤ぐらいまではストーリーや雰囲気共に非常に良い感じのお話ではあるのですが、終盤の『謎解き』以降の展開がやや急展開すぎてちょっと安っぽい印象になってしまっているのは残念なところかなぁ?
ラストの『矢鱈と唐突で印象的なオチ』は賛否両論ありそうですけど個人的には嫌いじゃ無いノリですし、謎解き部分の流れがもうちょっと上手く出来てたら更に良かったと思うので、ちょっと残念なところでした。
総評としましては、なかなかに良く出来た『フェティッシュな印象のサスペンススリラー映画』って感じの作品です。
デ・パルマ監督とかアルジェント監督とかのフェティッシュ系スリラーが好きならば、結構ハマれる内容ではないかと思うので、そういう系統の映画が好きならオススメかなぁ…という印象。
色々と粗削りな印象を受ける部分もありますが、独特の個性とパワフルさを感じさせてくれる作品だったので、この監督の次回作にも期待していきたいところですよ。