■■■「悪魔がみている」■■■
(65点/サスペンス:結構オススメ)
元兵士のトマスは、戦場でのとある出来事が原因でトラウマとなり、帰還後も上手く社会に溶け込めずに、建設現場作業員ながら教会に住み込みホームレスのような生活を続けていた。
彼の窮状を知った教会のシスターであるクレアは、彼に仕事をあっせんする事を提案。
それは、古びた家で病気の母の看病をしながら暮らすマグダという女性の元で、彼女の家の修理や家事の手伝いをサポートしつつ、一緒の家で暮らすというものだった。
やがて、一緒に暮らすうちに彼女のミステリアスな魅力に惹かれていくトマスだったが、『重病のために屋根裏部屋から出られない』という母親の看病の際に、マグダには怪我や生傷が絶えず血まみれのシーツを洗ったりと不穏な様子がある事が判明。
トマスはマグダの母親に何が異常な秘密があるのではないかと、疑問を抱くようになっていくが…
『重病の母親』の看病をする女性と一緒に暮らす事となった帰還兵の男性が、彼女の母親に隠された恐るべき秘密を知る事となる…という、オカルト風味のサイコサスペンス映画。
タイトルだけみると、なんとなくオカルトというよりも『ストーカーもののスリラー映画』みたいな感じのタイトルですが、実際の中身の方はオカルト系というか、理不尽&不条理系のカルト映画みたいな作品です。
なんというか普通のサスペンスというよりも、独特な映像表現や演出が非常に不気味で雰囲気映画的な印象が強い内容で、古びて時代がかった不気味なアパートに、屋根裏部屋に棲む『重病』と言われている不気味な老女、家の中に出現するコウモリのような謎の生物、主人公が過去の記憶として繰り返して見る『トラウマとなった悪夢』や謎の『古代のお守り(アミュレット)』等…
とにかく『観ていて不安になるような要素』がわんさと詰め込まれているうえに、それらの全てが不安をあおるようなカット割りやら演出で延々と表現されるため、観ているとどんどん情緒不安定になっていくような不安感に襲われるようなの内容。
映像に加えて、ポップスだかロックミュージシャンだかの歌を『逆再生』したと思われる、意味不明の不協和音のようなBGMも抜群に不気味で良い味を出しています。(某ロック歌手のレコードを逆再生すると『悪魔の声が聞こえる』とかって都市伝説がありますが、その辺が関係してるのかしらん?)
デヴィット・リンチの「イレイザーヘッド」ほどではないですが、なんとなくリンチ作品やらの影響を受けているような感じの印象を受ける作りで、とにかく理不尽で不気味な作品ですね。
お話としては、一応は謎解きサスペンスっぽい展開となっており、お話が進むにしたがって『重病の母親の秘密』やら『主人公の過去に秘められた謎』みたいなのが徐々に明らかになっていくのですが、こちらのストーリーの方も割とトンデモ展開で色々とパンチの効いている内容で良い感じ。
ただ、もともとが物凄い理不尽系のノリなので、終盤で『衝撃の事実』みたいな展開をやられても『あ、そうなんですか、ハイ?』みたいな感じになってしまって、特に驚きを感じる事が出来ないのは難点かなぁ?(笑)
あと主人公の過去にまつわる秘密が、あまりにも『小出し』すぎて序盤はちょっとイライラさせられてしまうのは気になった部分かも…
総評としましては、『不気味で良い味を出した理不尽系オカルトサスペンス映画』という感じの作品ですね。
リンチとかほどブッ飛んでは無いですが、良い意味で『不安定で嫌な気分になれる鬱映画』という感じなので、そういうノリの作品が好きであればなかなかオススメ出来る一本ではないかと思います。
個人的には演出・ストーリーともに割と好みの内容だったので、雰囲気映画やらカルト映画的なノリが好きな人は、気になるようであればチェックしておく事をオススメしますよ。