■■■「バッド・ヘアー 」■■■
(50点/オカルト)
子供の頃から重度の縮毛に悩むアナは、音楽専門チャンネルで働きながら、いずれは司会者として自分の番組を持ちたいと目標を持っていた。
そんな矢先に制作会社の組織再編で、新しいワンマンな性格のプロデューサーであるゾラの元で働くこととなった彼女は、組織からクビを切られないように、彼女に自分の企画を持ち込むこととなる。
ゾラは『番組には外見も重視される』との考えから、番組の司会を勤める条件として彼女に髪にウィッグを編み込む事を提案。
彼女の紹介で勧めるままに美容室に訪れたアナは、そこで『魔力的な不思議な魅力を放つ髪の毛』に出会い、その髪を自分のウィッグとして装着する事となるが…
人間の血を吸う『呪いの髪の毛』に取り憑かれた女性が恐るべき運命に巻き込まれていく…という、モンスター映画風味のオカルトサスペンス映画。
本作はどうやらhuluで製作されたオリジナルのホラー作品という事のようですが、Netflixにせよhuluにせよネット配信局のオリジナルの作品って小粒な雰囲気の作品が多い印象なのですが、本作もご多聞に漏れず小粒な感じのホラーという感じの作品ですね。
この本作でも描かれる『髪で血を吸う妖女』みたいな設定は世界各国の民話や伝承でも良く登場しそうな印象があるのですが、ホラー映画になると意外と少ない題材という気がします。(Jホラーだと『不気味さ』を表す記号として良く使われているイメージですが…)
単純に中途半端な特撮で『髪の毛』を動かすと、どうしても安っぽく見えがちだからでしょうか?
本作はCGが進歩した時代に作られた新作だけあって、その辺の『安っぽさ』はシッカリと解消されているのは良い感じですね。
お話としては『とある女性司会者がプロデューサーの勧めで美容院にウィッグを付けに行くんだけど、実はそのウィッグが人間の血を吸う「呪われたウィッグ」で、彼女は「美しい髪の毛」を維持するために髪の毛に操られるままに殺人を犯していく…』みたいな感じのストーリー。
『呪いのアイテム』に操られた主人公が命じられるままに殺人を繰り返していくという割とありがちな設定がメインの展開なのですが、それ以外にも番組製作スタッフ同士の権力争いだったり、『呪いの髪の毛』にまつわる伝承や背景の描写に妙に力が込められていたりと、意外と凝ったストーリーになっているのは面白いですね。
また、さりげなく『黒人差別的な問題』やら『黒人としての外見(極度の縮毛)に悩む主人公』の姿やら、単純なホラーとは違った切り口の問題を取り上げているのも、方向性としては悪くない印象。
しかし、その辺の『ホラーではない要素』が足を引っ張っているような部分もあって、人間ドラマ的な要素やら『呪いの髪の毛』のバックボーンを語るシーンに尺を多く取られているせいで、全体的にお話のテンポが遅めなのは残念なところ。
また『呪いの髪の毛』は『実は魔女の髪の毛で人間の血を吸って美しさを保つ』みたいな設定なのですが、『髪の毛が自在に動いて人間の血を吸う』というだけの表現では、ホラーとしては地味で面白味に欠けるのも辛いところです。
でも、単なる直球ストレートな『呪いのアイテムもののオカルトサスペンス』かと思いきや、終盤からの展開はかなり意外な方向に進んで『妖女大決戦』みたいな予想外の派手な展開に突入していくのは割と楽しいです。
ただ、『派手な展開』に関しても『黒人差別問題』を扱う内容に関しても、やや弾けきれてない印象があるのは難点で、どのネタに関しても小ぶりにまとまってしまっており、いま一つ盛り上がりに欠けるんですよね。
作品自体のアイデアは悪くないと思うので、それこそ「ブラムハウス」の作品のように、一点突破型で『ブラックなネタ』とかに方向性を振った方が良かったんじゃないかなぁ?
総評としましては、いま一つ中途半端な印象の『物足りなさの残るオカルトホラー映画』って感じの作品でした。
オススメするには弱いですが、色々な題材や方向性を取り込んだ作りは悪くないので、まあ気になるならばお好みでという感じでしょう。
それこそ『huluに加入していればいつでも観れる作品』だと思うので、加入している人は普通にチェックしてみても良いかもしれませんよ。