■■■「スプートニク」■■■
(55点/サスペンス)
冷戦時代のソビエト。
宇宙ステーションから帰還中の宇宙船で謎の事故が発生。
事故の生き残りであるコンスタンティンが、事故当時の記憶を失っていた事から、神経科の医師であるタチアナが原因の調査と治療のために軍に招集される。
コンスタンティンの調査を始めた彼女だったが、彼の身体に起こった変化を調査していくうちに、実は彼が正体不明の地球外生物に寄生されており、彼女は実は『宇宙飛行士とエイリアンとの分離』のために呼ばれた事を知らされるが…
正体不明のエイリアンに寄生された宇宙飛行士と彼を救おうとする神経科医の戦いを描いた、ロシア製のSFサスペンス映画。
パッケージの雰囲気から「物体X」的な寄生生物もののモンスターホラー映画かと思っていたのですが、実際の中身の方はサスペンス要素が強めの陰謀論的SF系ホラー映画って感じの作品でした。
お話としては、冷戦時代を舞台として『とある神経科医が「事故で記憶喪失になった宇宙飛行士」の治療のために軍に呼ばれるんだけど、実はその宇宙飛行士は謎のエイリアンによって寄生されており、本当は彼女が呼ばれたのは宇宙飛行士と寄生生物を肉体的・精神的に分離する事が目的だった…』みたいな感じの展開。
序盤は、『寄生生物の正体は何なのか』とか『宇宙飛行士と寄生生物を分離する手段はあるのか?』みたいなところを中心に、いかにもSFっぽい展開でお話が進んでいくのですが、中盤以降はお話のテイストが変わって『実は軍が寄生生物を軍事利用しようとしていた』とかって、いかにも冷戦時代が舞台らしい感じの陰謀論的サスペンス映画へとお話が突入していきます。
この序盤のSF的な謎の提示部分はなかなか良く出来ていて、『寄生生物と宿主の精神の関連性とか繋がりは何なのか?』とか、『いかにして両者を分離するか』といった部分にフォーカスして、神経科学をテーマとした硬派な感じの設定のSF作品ってテイストがあるのはなかなか面白いです。
これに対して中盤以降は話の様相が変わって、『軍の陰謀論』みたいな話をメインとしてホラー的な要素が強めになってくる感じで、寄生生物の暴れまわるようなシーンも豊富で、序盤とは違った『派手な方向性』にお話が突入していくのは、ある意味で意外性があって悪くない印象。
モンスターのデザインも『蛇人間(というかコブラ人間)』みたいな感じで不気味で良いですし、『相手が恐怖を感じた時に発するホルモン』を狙って人間を襲うって設定も、なかなか怖くて良い感じ。
ただ、派手な内容になってビジュアル的な面白さが増すのは良いのですが、序盤が『SF的でスケールの大きそうな話』なのに対して、中盤以降が妙に『下世話で安っぽいコテコテな印象の話』になってしまうのは、唐突にスケールラウンしてるみたいな感じで個人的にはちょっと微妙な印象を受けてしまいましたよ。
また、主人公たちのキャラの掘り下げがシッカリしているのは良いのですが、そのせいで全体的に尺が長めでちょっとテンポの悪さを感じてしまう部分があるのも気になるところ。
ラストの、宇宙飛行士の過去と主人公の息子の話の関連性も釈然としませんでしたし、もうちょっと描きたいテーマやら作品の方向性をハッキリとさせた方が良かったんじゃないかなぁ?
総評としましては、悪くは無いものの『いま一つスッキリしない感じのSFサスペンス映画』って感じの作品ですね。
特撮やらの出来も良くて映画としての完成度は高いので、単純にSFホラーとして楽しみたいのであれば、普通に楽しめる一本だと思います。
ただ個人的には、映画としては悪くは無いものの、テンポやら方向性やらで微妙に物足りなさを感じてしまう作品って感じでしたよ…