NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「野良人間 獣に育てられた子どもたち」(40点/サスペンス)

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■■■「野良人間 獣に育てられた子どもたち」■■■
(40点/サスペンス)


 1987年、メキシコ南西部のオアハカ郊外の人里離れた山中の民家で火災が起こり、元修道僧であるフアンと身元不明の3人の子供の焼死体が発見されるという事件が発生する。


 そして現代。
 TV局の映像ライブラリーからこの事件の映像を発見し、フアンが『ジャングルで発見された身元不明の野生児』を引き取って育てていたと知ったスタッフたちは、当時のフアンの知人たちが残していた記録映像や証言を元に『野生児の謎』と、当時『どのような事件が彼らの周りで起こっていたのか』を突き止めるために調査を開始するが、彼らはやがて恐るべき真相へと辿りつくことになるのだった…

 


 メキシコの山間部で発見された、言葉の通じない『野生児』(動物に育てられた子供)と『彼らを引き取って育てようとした修道僧』のたどる運命を描いた、モキュメンタリー風味のサスペンススリラー映画。


 「ブレア・ウィッチ」等でお馴染みとなった、いわゆるファウンド・フッテージ(発見されたフィルム)を題材とした『なんちゃってドキュメンタリー』系の映画なのですが、今回は心霊やUMAではなく『野生児』を題材にした作品という感じです。


 確かに『野生児』を題材としたファウンド・フッテージ映画ってお目にかかった事が無いので、『よくまあ色々と新しいアイデアを思いつくなあ…』というのが正直な感想ですね。


 お話としては、かつての『家屋全焼事件』の謎を追いつつ、元修道僧の男が『いかにして野生児たちを預かるようになったのか?』また『彼らを取り巻く周辺でどのような現象が起こっていたのか?』といった事を、当時の記録映像や関係者の証言を元に紐解いていく…みたいな感じの展開。


 ノリとしては『リアル系のモキュメンタリー作品』となっており、実際に過去にあった『野生児』の事件の情報を挟んでみたり、主人公の修道僧が割と『特殊な親』の元で育てられた事が切っ掛けとなっているといった感じの設定が語られたり、メキシコの閉鎖的な田舎町の雰囲気やら時代背景やらが妙にリアルだったり…

 と言った感じにリアリティを出そうと頑張っており、『もしかしたら現実にあった事件かも?』と思わせるような感じの話に仕上がっているのは良いですね。


 ただ世界観やプロットが矢鱈とリアルな割には、素人がハンディカメラで撮ったはずの映像が妙にアングルやライティングにこだわっていて、非常に見やすい感じの映像に仕上がっているのはご愛敬。(笑)
 (まあリアリティを追求して、手ブレしまくりのむちゃくちゃ見辛い映像で撮られてもそれはそれで困るんですが…)


 また『野生児』が題材といっても、単純に『狂暴な野生児』の恐怖を描いたような内容ではなくて、『野生児』たちに対する主人公の『宗教的・社会的な価値観』や『当時の社会的背景』なんかを、上手い具合にサスペンス要素に盛り込んでいるのも悪くありません。


 ただ設定はリアルで凝っているのですが、本作がサスペンス映画として面白いかと言われると、そこは微妙なところなのが困りもの。


 そもそも『野生児を引き取って育てる』という行為そのものが、リアルに映像として描かれてもたいして面白くなく、サイコサスペンス的なノリがメインとなっているとはいいつつも、基本的には『大きな事件も起こらないままに淡々とお話が進んでいくシーン』が殆どのため、観ていてどうにも退屈です。


 『野生児の秘密』に関しても作中で解明されていない部分が多くて、なんか観ていてモヤモヤしますし、オチに関しても『だから何なんだよ?』という感じであまりスッキリしません。


 リアルテイストを追求したかったのかもしれませんが、全体的に地味すぎるせいで微妙になっている感じなので、もうちょっとドラマチックだったり派手な要素があっても良かったんじゃないかなぁ?


 モキュメンタリーとしての雰囲気は悪くなかっただけに、どうにも残念な部分が目に付いてしまう作品でしたよ…

 


 総評としましては、雰囲気やプロットは面白いものの『地味で盛り上がりに欠けるモキュメンタリー系のサスペンスホラー映画』って感じの作品ですね。


 リアル系の雰囲気とか背景の掘り下げやら悪くない部分も結構あったので、リアル寄りのモキュメンタリー映画が好きな人とかであればそこそこ楽しめる作品かもしれません。


 とまれ『野生児を引き取って育てるドキュメンタリー』という設定自体が珍しいジャンルだと思いますので、そういう設定に興味がある人とかであればチェックしておいても損は無い一本ではないかと思いますよ。