■■■「プー あくまのくまさん」■■■
(55点/スラッシャー)
森の中でプーやピグレットといった奇妙な生き物たちにであった幼き日のクリストファー・ロビンは、彼らに食べ物を与えたりと交流を深めるが、青年となった彼は大学進学のために都会へと引っ越すこととなり、プーたちを森へと残したまま旅立ってしまう。
それから数年後、大人になった彼は婚約者とともにプーたちに再開するために再び『100エーカーの森』を訪れるが、そこで彼らを待っていたのは『人間に見捨てられた』と考えて、飢えたうえに恨みを抱き、怪物となり殺人鬼と化したプーたちの姿だった。
一方、ストーカー男のトラウマに苦しめられる女性・マリアは、心の傷を癒すために女友達たちと共に『100エーカーの森』のコテージへとバカンスに訪れるが…
森に取り残された「くまのプーさん」が人間に恨みを抱いた怪物と化して、クリストファー・ロビンを含めた人間たちに再会する…という、モンスター映画風味のスラッシャーホラー風味。
先日、「くまのプーさん」の原作者が死去してから50年が経過し、その著作権が消滅した訳ですが、その直後に速攻でこういったホラー映画が作成される辺り、『アメリカのB級ホラー映画界のフットワークの軽さは流石だなぁ…』と無駄に関心させられます。
(ちなみに版権が消滅したのはアクマで原作で、ディズニーのプーさんの版権は消滅していません。)
そんな訳で、『プーさんを題材にしてホラー映画を作る』という『一発ネタ』に特化して作られたネタ系のB級ホラー映画な訳ですが、内容に関してもある意味で予想通りというか、プーさんを題材にしている以外の点に関しては、ごく普通の低予算スラッシャーホラー映画という感じの作品ですね。
一応、お話としては「くまのプーさん」のストーリーに準拠した形を取りつつ『森に置いて行かれたプーさんたちが、人間に恨みを抱く凶暴な怪物になってしまった』という感じの設定になっているのですが、実際の中身の方はぶっちゃけ『プーさん』の要素はほぼ皆無な状態。
一応、本編には怪物と化したプーさんとピグレットが登場(イーヨーはプーさんたちに食われた)するのですが…
プーさんたちは『ぬいぐるみ』的な要素の無いあからさまに人間の体型で描かれており、どう見ても『クマやイノシシのマスクを被ったイカれた殺人鬼のオッサン』にしか見えないため、プーさんっぽさは微塵も感じられません。
まあ、ピグレットは『それブタじゃなくてイボイノシシだろ!?』みたいな凶悪な面相をしていてちょっと面白いのですが、それにしてももうちょっと『プーさん』っぽいデザインでも良かった気がします。(シルエットだけ見たら、2匹とも体格の良い農夫にしか見えないし…)
でもまあ、不満となる『プーさん要素の少なさ』を除けば、映画の内容はごく普通のスラッシャーホラー風味の映画という印象ですね。
プーさんたちが割とサクサクと人間を殺しまくってくれるのでテンポも良いですし、殺し方も色々と趣向を凝らしており飽きないような工夫もされています。
ただ、全体的に殺害シーンが薄口でアッサリしていてやや物足りなさを感じるのと、プーさんたちに『殺人鬼』としての個性が薄くて、いまいとつ魅力に欠けるのは困りもの。
せっかく『プーさん』というキャラクターの設定を使っているんだから、もう少し『プーさん』らしい殺人鬼としての個性を描いてほしかったですよ。
(一応、『ハチミツ』を使うシーンとかもあるのですが、物凄く取ってつけたようなレベルだし…)
主人公(?)となるクリストファー・ロビンの扱いもちょっと中途半端ですし、ラストも何のオチも無いような投げっ放しっぷりですし、正直なところ『もうちょっとどうにかならんかったかなぁ…』という印象の作品でしたよ…
総評としましては、悪い出来ではないものの『どうにも中途半端で物足りなさの残るスラッシャーホラー映画』って感じですね。
どうせ「くまのプーさん」を原作に使うなら、もっとコメディホラーとかブラックユーモア的な内容にするとか、ヤバい路線で攻めてほしかった印象。
まあ純粋に『B級スラッシャーホラー映画』としては十分に及第点な内容だとは思うので、スラッシャーホラーが好きでネタ枠として気になるようであればチェックしておいても損はない一本ではないかと思いますよ。