■■■「ベニー・ラブズ・ユー」■■■
(55点/スラッシャー)
両親と同居するおもちゃデザイナーのジャックは、35歳の誕生日に不慮の事故で唐突に両親を亡くしてしまう。
更に追い打ちをかけるように会社で減給を告げられた彼は、実家を手放す事を決意。
荷物を整理し心機一転するために、子供の頃から大切にし愛情を注いできたテディベアの『ベニー』を捨てる事となる。
しかし、彼に捨てられそうになったベニーはゴミ捨て場から逃走。
彼と再び過ごし彼の愛情を自分だけのものにするために、彼の元の再び姿を現し彼の周りの人間を次々と殺害していくのだった…
長年愛された人形が捨てられた嫉妬から人間たちを殺し始める…という、『闇のトイストーリー』とでも言うような設定の人形ものスラッシャーホラー映画。
『長年愛された人形が生命と心を持つようになる』という設定だけなら、なんとなく「トイストーリー」的でファンタジーな感じなのですが、『嫉妬に狂って殺人鬼になる』という歪みっぷりは、なかなかブラックな感じで面白いですね。
流石はイギリス製のコメディホラーという印象。
ただ、良くも悪くもイギリス製のブラックユーモア系のコメディらしく、何というか人を選ぶ作品なんですよね。
何が人を選ぶって、全体的に『何かノリが変』なんですよ。
殺人人形は人間への逆恨みや嫉妬心で行動しているのかと思いきや、もともと邪悪な感じで関係ない人間を殺しまくりですし、主人公も殺人人形が身近に居るのに割と平然と生活していたりして、お互いに何がしたいのかが釈然としません。
主人公の両親の死因にはじまって、要所要所に挿入されるブラックユーモア的なギャグも笑うべきなのかどうなのか分からないようなネタが多くて反応に困りますし、良い意味でも悪い意味でも『イギリスコメディらしい悪趣味さがあふれる作品だなぁ…』という感じ。
全体的に展開は早い作りなのですが、特に中盤辺りにかけては主人公たちの目的やら、お話がどこを目指しているのかの着地点が見えてこないうえに、そういった『笑えないギャグ』を延々と見せ続けられるため、どうにもモヤモヤしてしまいます。
ただ殺人人形の暴れっぷりは悪くないですし、残虐シーンとかもそこそこ凝っていてスプラッタ系作品としては悪くない印象。
また中盤までのグテグテっぷりに対して、主人公たちが力を合わせ『改造したオモチャを武器に殺人人形たちと戦う』という終盤の展開はキャラの設定なんかが非常に活きていて良い感じ。
殺人人形側にも予想外の助っ人が登場したりしてラストのバトルはなかなか熱いですし、終盤の展開を見るためだけにでも見ておく価値はある作品かも?
ただ、オチがちょっと中途半端で弱い印象があったのは気になるところかなぁ…
総評としましては、ややクセが強いものの『それなりに楽しめるブラックユーモア系スラッシャーホラー映画』って感じですね。
ちょっとグテグテだったり英国ジョークらしいクドさはありますが、スラッシャーホラーとしては悪くないですしそれなりに面白い部分もあるので、切り捨てるには惜しい作品という印象。
良くも悪くも『英国コメディらしい要素』とかが嫌いでなければ、とりあえずチェックしておいても良い一本かもしれませんよ。