■■■「ミンナのウタ」■■■
(60点/オカルト:結構オススメ)
人気のアイドルグループである「GENERATIONS」のメンバーである小森隼は、自分の出演するラジオ番組の収録の前にADと共に倉庫で過去の手紙を整理していたところ、30年前に届いたまま放置されていた「ミンナノウタ」と書かれた一本のカセットテープを発見する。
その日の放送の際に、「カセットテープ、届きました?」というノイズ混じりの奇妙なリスナーからのメッセージを受け取った彼は、その翌日に急に行方不明となってしまう。
ライブを直後に控えていた事から、マネージャーの凛は元刑事で探偵の権田に調査を依頼。
調査を進めるうちに、失踪直前の隼が『女性の鼻歌のような、妙なメロディが頭から離れない』という奇妙な悩みをメンバーに打ち明けていたことが判明する。
人気男性アイドルグループのメンバーが、倉庫で発見した奇妙なカセットテープを契機として『呪いの歌』にまつわる恐るべき事件へと巻き込まれていく…という、オカルトサスペンス映画。
「呪怨」シリーズの清水崇監督の作品で、実在するアイドルグループの「GENERATIONS」のメンバー(まあアイドルといってもEXILEの系譜なので割とワイルドですが)が本人役で出演するという事で『芸能人主演の話題性重視の片手間で作られた宣伝用ホラーかな?』と思いきや…
なかなかどうして予想外に良くできた良作のオカルトホラー映画でしたよ。
清水崇監督は、最近の「〇〇村」のシリーズがややマンネリ気味でいま一つな印象が強かったので、久々の会心の一作という印象。
お話としては、ぶっちゃけて言うといわゆる『呪いのビデオのカセットテープ版』といった感じの設定ではあるのですが、ビデオと違って本人が意識せずに口ずさむ『ハミング』や『鼻歌』を介して伝染病のように仲間たちに広まっていくという設定や、BGMに混ざってうっすら『呪いの歌』を流す事で、良い感じに不気味さや緊張感を盛り上げる演出に使っているのは上手いなと感じました。
また、この設定のおかげで『「GENERATIONS」のメンバーを中心に事件が展開して全員が巻き込まれていく』という設定に全く無理が無い構成となっており、非常に良くできたシナリオだなと感心。
オカルトサスペンスらしい謎解き部分も良くできており、徐々に判明していく予想外の衝撃の展開はなかなかに面白いです。
そして、それ以上に良くできているのが『呪いの歌』を作った『謎の少女』のキャラクターで、ややネタバレになってしまいますが、最初は単に『いじめられた少女が復讐のために作った呪いなのかな』と思わせておいて、徐々にその背後に隠された『邪悪さ』のようなものが滲み(にじみ)出してくるような構成は非常に秀逸。
『ビジュアル的な怖さ』も流石は清水崇監督という感じで要所要所にインパクトのある見せ場を作ってくれるのは悪くない印象です。
ただ現役アイドルグループが主役という事もあってか、グロすぎるシーンはご法度になっているのか、全体的に衝撃的なシーンが少な目でホラー描写にやや盛り上がりに欠ける印象があるのは残念なところ。
またラストの投げっぱなし気味の『後を引く展開』は、人によっては好みの分かれるところかもしれません…
(個人的には、なかなか良くできた落としどころだと思いましたが…)
総評としましては、予想以上に『なかなかに良くできた新作のJホラー系サスペンスホラー映画』って感じですね。
やや派手さに欠ける部分はありますがキャラや設定も良く立っており、新基軸とか新シリーズとして続けていけるだけのポテンシャルを持った作品という感じです。
いま一つ話題になっていないですが、Jホラーが好きな人であれば十分に楽しめる内容で、もっと話題になっても良い新作だと思うので、その手のジャンルが好きで気になる人はチェックしておいても損はない一本ではないでしょうか?