■■■「サウンド・オブ・サイレンス」■■■
(40点/オカルト)
ニューヨークで暮らすエマは歌手を目指して活動したいたるが、対人恐怖症のせいもありオーディションが上手くいかず、落選し続けて自信を失っていた。
そんなある日、父が入院したという連絡を受けた彼女は、恋人のセバと共に故郷のフランスへと向かう事となる。
医者から、父が階段から落ちて頭を打ち面会を行えないと知らされた彼女は、母親に事情を聞いたところ『唐突に別人のようになって母親を殺そうと襲い掛かり、それに抵抗するために階段から突き落としてしまった』という、驚くべき話を聞かされる。
両親の奇妙な行動に不審に思いつつも、恋人と共に実家で一夜を過ごす事となった彼女は、ガラクタ修理が趣味の父が事故の前に修理していたという古びたラジオの電源を入れてみたところ、ラジオから音が流れた瞬間のみ『居ない筈の何者かの姿が見えるようになる…』という驚くべき現象を目撃するが…
ガラクタ屋で手に入れてきた古いラジオが実は呪われており、ラジオの電源を入れた瞬間から『何か』が出現するようになる…という、オカルトホラー映画。
元々、短編映画として作られて評判が良かったものを長編としてアレンジしてリメイクした作品のようですが、『ビジュアル的な面白さ』に特化して作られた良い意味で『短編らしい』特徴を持った作品という感じですね。
本作のウリと言える『(ラジオから)音がした瞬間のみに幽霊が出現して、少しづつ迫ってくる』という設定はビジュアル的にもなかなか面白くて、「ライト/オフ」(電気を消した瞬間のみ幽霊が出現する映画)の逆バージョンというようなテイストで、なかなかインパクトがあって良い感じ。
スイッチをオン/オフするかのように『音が聞こえた瞬間のみ怪異や怪現象が出現する』というビジュアルは、オカルトというより都市伝説的な味わいがあって面白いです。
ただ肝心のお話の方は、ホントに『その設定を活かすためだけにお話が作られたんだろうなあ』というようなテイストで、どうにも盛り上がりに欠ける内容という印象。
ややネタバレをしてしまうと、ラジオにはとある『家族の霊』が取り憑いており、戦争の後遺症で『音に異常に敏感になった父親の霊が、音を立てた犠牲者に取り憑いて他の人間を襲う』みたいな設定なのですが…
音のした瞬間のみ出現するというビジュアルやら、呪いのラジオに秘められた秘密を解くプロセスは割と面白いものの、幽霊自体はあまり怖くないうえにお話のテンポも遅くてどうにも冗長な作りなのが気になるところ。
また、『音を出すと霊に襲われる』という設定から異常に静かなシーンが多くて、淡々とした展開も含めて観ていて眠くなってしまって大変でした…
作品全体としての『雰囲気づくり』は悪くないものの、登場人物が少なく犠牲者も少ないため山場となるシーンもあまり無いですし、ラストのオチもやや蛇足な感じでしたし、短編のアイデアをもう少しうまく活かして欲しかった感じの作品でしたよ。
総評としましては、『淡々としてていま一つ盛り上がりに欠けるB級オカルトホラー映画』って感じですね。
ビジュアルとか雰囲気とか悪くない部分もあるのですが、なんとなくそれだけで終わってしまっている感じなので、推すには弱い作品という印象。
気になっているのであれば観るのを止める程では無いですが、よほどで無ければ『どこかのサービスでサブスク入りとかを待っても良い程度の一本』かもしれませんよ。