■■■「セーヌ川の水面の下に」■■■
(70点/生物パニック:オススメ)
トライアスロンの国際大会を目前に控えたパリで、会場となるセーヌ川で巨大ザメが目撃され、犠牲者と思しき死体が発見される。
環境保護の調査中に巨大ザメに夫と仲間を食い殺された過去を持つ海洋生物学者のソフィアは、調査用のビーコンからそのサメがかつて仲間たちを食い殺した、全長7mの巨大なアオザメである事を知る。
警察からの依頼によってサメの捕獲に協力する事となった彼女だったが、サメの存在を軽く見た市長はイベントの準備を強行。
更に、そのサメは環境の変化による突然変異によって、とてつもなく危険な存在へと変化を遂げていたのだった…
トライアスロン大会に湧くパリのセーヌ川に突然変異した巨大ザメが出現し大パニックを引きおこす…という、巨大ザメものの生物パニック映画。
Netflixのオリジナルで制作された人食いザメもののフランス製の生物パニック映画なのですが、『サメ映画』って割と『B級の低予算映画の代表格』的なイメージがあるのですが、本作は良い意味で予想を裏切るレベルでかなりシッカリと予算をかけて作り込まれていて、エンタメとしても十分に見ごたえのある作品に仕上がっています。
ネトフリのオリジナル作品は当たり外れはあるものの、たまにこういう物凄い良作をブチ込んで来るから油断できません。
お話としては、『トライアスロンの開催が迫すパリのセーヌ川で巨大ザメが目撃されて、過去にサメに仲間を殺された生物学者が警察と協力してサメの捕獲に乗り出すんだけど、実はそのサメはかつて彼女の仲間を殺したサメで、更には利権に目がくらんだ市長がトライアスロンを強行開催する事となり…』みたいな感じの展開。
プロット自体は非常にオーソドックスな構成という感じなのですが、フランス製の映画だし主人公が過去にトラウマを抱えていたりする辺り、てっきり『人間ドラマが中心の地味目の展開』になるのかと思いきや、地味なのは序盤の導入部分のみでかなり見どこのの多い生物パニック映画に仕上がっています。
設定的に『利権に目がくらんだ市長が警告を無視してイベントを強行する』みたいな流れは定番といった感じですが、他にも『頭のおかしい環境活動団体がサメの捕獲の妨害しようとする』みたいな展開もあったりする辺りは、割と現代的な風刺が効いた内容という印象。
お話のプロットや雰囲気的に、てっきりラストまでダラダラと引っ張って『イベント会場にやっぱりサメが現れました』みたいな展開かと思いきや、なかなかに予想を裏切る先の読めない展開の連続で、中盤あたりにもシッカリと見せ場を持ってきており退屈しない構成になっているのは好感触。
リアル寄りの設定(少なくともサメが空を飛んだりしない)でありながら、『サメなんて海に近づかなければ怖くないでしょ』って常識をシチュエーションやら力技やらで覆すような演出で、襲撃シーンではシッカリと『サメの怖さ』を存分に描く作りなのも良く出来ています。
犠牲者もサメ映画としてはかなり多めで、それこそ『食い足りない』という印象を受けない内容になっているのは良いですね。
終盤もコテコテの展開と思いきや、予想を裏切るレベルのド派手な大虐殺と大惨事と言う感じで、想像以上の迫力で大満足できる内容でした。
ただ、見せ場が多い故にキャラの描き込みは全体的に薄めなのは気になるところで、主人公の相棒となる警官とかチームのメンバーは、もうちょっと掘り下げがあっても良かったのでは…って気がしましたよ。
あと、ラストは落としどころとしては悪くないものの、やや力技すぎて『そんなアホな』とツッコミを入れたくなったのは自分だけですかね?(笑)
総評としましては、『数年に一本出るレベルで非常に良く出来た人喰いザメものの快作生物パニック映画』って感じです。
色々とツッコミどころはある内容ながらも、ツッコミどろこを小技ではなく『派手な演出と力技で捻じ伏せる』という、予想以上にパワフルな映画ですので、派手なパニック映画をサクッと楽しみたい人には特にオススメですね。
Netflixオリジナル作品故にネトフリに入っていないと観れないのが難点ですが、生物パニック映画とかが好きで観れる環境のある人は間違いなくチェックしておいて損のない一本ではないかと思いますよ。
(正直なところ、地味そうな映画の『あらすじ』と『パッケージ(サムネイル)』で損をしている部分があると思うので、映画の内容に合わせてもうちょっと派手な感じにした方が良いと思う…)