■■■「ヘルレイザー ワールド・オブ・ペイン」■■■
(スプラッタホラー/60点)
過激な取材スタイルの為に一般誌では記事が書けずに「アンダーグラウンド誌」というB級のタブロイド誌に記事を書き続ける事件記者のエイミーは、ある日、雑誌の編集長から編集部に届いたという奇妙なビデオを見せられる。
それは、『デッダー』と名乗る謎の新興宗教の教祖が、目の前で拳銃で頭を撃ち抜いて死亡した女性を死体から蘇らせるという物であった。
ビデオの内容に興味を持った彼女は、その真偽を確かめる為にビデオの差出人に会うべくルーマニアへと飛ぶが、差出人の女性は既に自殺しており、死体の側には彼女が最後に残したメッセージが収められたビデオテープと、奇妙な『パズルボックス』が残されていたのだった…
もはや何作目に当たるんだか覚えてないですが、クライヴ・バーカー原作による「ヘルレイザー」シリーズの最新作に当たる作品です。
このシリーズも、新作が出る度に微妙にアクションホラーになったり、シリアスになったり、ギャグっぽくなったりと紆余曲折を経ていますが、本作は到ってマジメなシリアス路線です。
やっぱ、ヘルレイザーはシリアスで陰惨なノリがしっくり来ますね。
イメージ的にはやや前作とノリが似ているかもしれませんが、不評だった前作と比較すると謎解き的な部分が非常に大きくなっており、悪夢とも現実ともつかない幻想的な恐怖世界と、謎が謎を呼ぶストーリー展開とがヘルレイザーの世界観と上手くマッチしており、全体的に非常に良いテイストを醸し出しております。
ヘルレイザーシリーズで御馴染みの『究極の快楽』の世界は今回も健在で、特に本編に登場する『地下鉄の最後尾車両』の情景は退廃的で蟲惑的なまでに美しく、クライヴ・バーカーの猟奇的な世界を見事に表現しており本作の最大の見所の一つと言えるでしょう。
シリーズのファンならば、このシーンの為だけに本作を観ておいても損はありません。
ただ、幻想的なのは良いのですが、ストーリー全般が余りにも悪夢か現実かが分からないような展開が多く、お話自体も非常に難解。 というか、ハッキリ言って訳が分からない部分が物凄く多いのが、本作の最大の難点かと…
(結局、新興宗教の教祖や魔術師達は何がしたかったんだか、私には良く分かりませんでしたよ…)
また、本作の真の主役とも言える『魔術師』の出番が結構少なくて、ゴア描写もそんなに多くないため、シリーズとしてはちょっと物足りなさを感じる部分も無くはないかも…。
総評としましては、全体的なテイストは悪くないのですが、とにかくストーリーが難解な事が最大の欠点と言える作品です。
特に、今までのシリーズを一本も観た事が無い人が観ると、ホントに全く訳が分からない映画になってしまうと思うので、楽しむ為には最低でもシリーズの基本的な設定(『魔術師』や『究極の快楽』が何を表すか)を知っている事が大前提と言えるでしょう。
ただ、独特の雰囲気や緊張感は非常に良く作られた作品で、シリーズのファンで、『ホラーは肌で感じる物だ』という趣味の人なら、非常に楽しめると思うので、そういう人にはオススメの作品です。
個人的には、テイストと映像だけでも非常に楽しめた1本でしたよ。