■■■「パラサイト・クリーチャーズ」■■■
(60点/モンスター)
アルプス山脈の標高3500mにあるグラツィウス気候研究所の管理人のヤネクは、観測機器の故障の修理のために科学者と共に山奥の小屋に赴いた際に、地球温暖化の影響で溶け出した氷河の一部が血のように真っ赤に染まっているのを発見する。
原因を調査するために氷河のサンプルを持ち帰ろうとする彼らだが、その際に近くの洞窟に入り込んだ愛犬のティニーが狂犬病のキツネらしき動物に襲われて怪我をしてしまうという事故が発生。
観測所に戻りサンプルを調査した彼らは、氷河を赤く染めている原因が未知の微生物の仕業である事を知るが、そんな矢先に彼らの観測所をキツネと昆虫をかけあわせたような正体不明の生物が襲撃し…
アルプス山脈の融解した氷河から出現した謎の寄生生物の恐怖を描いた、モンスターホラー映画。
タイトルから分かるとおりに、いわゆる寄生生物もののモンスターパニック映画ですが、アルプス山脈の氷河が融解して、その場所から『様々な生物の遺伝子を取り込んで変異する微生物』が出現し…みたいな感じの展開のお話で、簡単に言ってしまうなら『山岳基地版の「遊星からの物体X」』みたいな映画ですね。
『昆虫と哺乳類のハイブリッド生物』みたいなモンスターのデザインはなかなか秀逸で、ありそうで無かったタイプの訳の分からない感じの生き物はなかなかインパクトがあります。
怪物が無機質でいかにも『何も考えて無さそうな感じ』なのも、別の意味でちょっと怖いですね。
ただモンスターのアイデアやデザインは良いのですが、低予算映画故に怪物の出番があまり多くなくてチラ見せぐらいにしか登場しない怪物が多いのは難点かなぁ?
登場するのも薄暗いシーンが多くてあんまりハッキリと姿が見えないですし、ぶっちゃけて言ってしまうと『予告編で出てくるシーン』が怪物の登場するシーンの殆ど全てなので、流石にちょっと物足りませんでしたよ…
せっかく個性的な怪物を作っているのに物凄く出番が少ないのは、本作の最大の不満点と言えるでしょう。
また怪物だけじゃなくて登場人物のキャラもなかなか良く立っており、意外とどうでも良さそうなキャラやどうでも良さそうな設定が後で重要なフィーチャーになってくるって伏線の張り方は、なかなか面白いです。
ただ『身勝手なキャラが身勝手な事をしてみんながピンチに陥る』って展開を多用しすぎてるせいで、ワンパターン過ぎて終盤はちょっと鬱陶(うっとう)しさを感じてしまうレベルだったのは、ちょっとやり過ぎな感じかも…
あと序盤の展開はちょっとグダグダ感があって冗長な印象を受けますが、そこまでテンポが悪いという訳でも無いですし終盤の絶望感や悲壮感はかなり良い感じだったので、まあまあ許容範囲という感じ?
ラストの『後味が悪いんだけど救いがあるような感じ』に、後を引く印象的な落としどころもなかなか秀逸で良かったです。
総評としましては、低予算で物足りない部分はあるものの『なかなか良く出来たモンスターパニック映画』だと思います。
モンスターの出番が少な過ぎるので不満は残る部分はありますが、お話そのものはなかなか面白くて意外と楽しめた作品でした。
派手さは無いですが過剰な期待をしなければ、モンスター映画が好きであれば割と楽しめる一本ではないかと思いますよ。