■■■「サベージ・キラー」■■■
(55点/バイオレンス)
婚約者に会うためにニューメキシコを訪れた聾唖(ろうあ)の女性ゾーイは、砂漠の真ん中で一人の少年がギャングになぶり殺しにされそうになっている現場に遭遇。
とっさに少年を助けようとした彼女は、逆にギャングによって捕らえられて監禁される事となってしまう。
彼女は凄惨な暴力とレイプの末にナイフで刺されて砂漠へと埋められるが、近くを通りかかったネイティブアメリカンのシャーマンの老人によって救出されて、呪術の儀式によって復活。
儀式の影響で強大な力と不死の肉体を手に入れた彼女は、自分を殺そうとしたギャングたちに壮絶な復讐を繰りひろげていくのだった…
ギャングたちによってレイプされて殺害された女性がシャーマンの呪術で復活してギャング達に復讐するという、リベンジもののバイオレンスアクション映画。
「アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ」(「発情アニマル」のリメイク)のヒット以降、色々と作られている印象のあるリベンジバイオレンス作品で、本作もそんな中の一本という感じ…
お話としては、リベンジ系の作品のお約束な感じのストーリーで『ギャングによって身も心もボロボロにされた女性が、激しい怒りによって復讐のために立ち上がる』という展開なのですが、本作の他の作品との最大の違いと言えばやはり『死んだヒロインがゾンビになって復活する』というオカルト的な設定でしょう。
この設定のお陰で、ヒロインの容赦のないバイオレンス描写や屈強な男どもを相手に大立ち回りを繰り広げる事への説得力が増しているのは、なかなか面白い手法という感じ…
この設定は本編にも上手い具合に活かされており、アクションシーンやバイオレンス描写がとにかく派手なのが本作の特徴という感じですね。
ギャングの腹を切り裂いて腸を引きずり出したり超人的な身体能力で獣のように襲い掛かったり、とにかく観ていて豪快で面白いです。
戦いでボロボロになっていく自分の体を金具やダクトテープで修復してまで戦い続けるという執念の壮絶さも、なかなかカッコ良いですね。
また展開が派手になってるだけじゃなくて、ヒロインが『不死身の怪物』となる事によって『復讐を果たしても以前の自分には戻れない』というちょっと物悲しいドラマが生まれているのも、なかなか良い感じ…
終盤の恋人との再会のシーンとか結構切なくてウルっときましたよ…
ただオカルトの超自然的な要素が加わった事によって、逆にお話としてリアリティが無くなってしまったのは賛否両論ありそうな印象。
リベンジものは『ひ弱な女性が執念を燃やして強くなって復讐を果たす』って部分にカタルシスの要素があるので、その部分を端折って『オカルト的な要素で超人になって簡単に復讐を果たす』ってノリの本作は、そういう作品が好きな人にとってはちょっと方向性が違うかも?
序盤の監禁~レイプされるシーンの描写も割とアッサリしてますし、『リベンジで得られるカタルシス』というよりは『アクション映画としての派手さを追求したような作品』という感じですね。
あと中盤までは結構派手な復讐シーンや壮絶なシーンがあるものの、終盤はテンポを重視してか単なるアクション映画的なノリになってしまって、ちょっと印象の薄い展開が多かったのは残念な部分かなぁ?
どうせ派手さを追求するなら、終盤ももっと狙った『派手な殺し方』がいっぱいあれば更に面白い作品になったかも…
総評としましては、リベンジバイオレンス映画の割にはそこまでドロドロした感じじゃなくてアクション重視の『派手で痛快なバイオレンスアクション映画』という感じの作品ですね。
単純にイキオイがあって面白い作品なので『美女がゾンビになって復讐する』という設定に興味があれば、普通にチェックしておいても損は無い一本だと言えるでしょう。
タイトルやパッケージから受ける印象とはちょっと違う映画かもしれませんが、あまり細かい事を考えずに楽しむにはなかなか良い感じの映画だと思いますよ。