■■■「ゾンビ・リミット」■■■
(65点/サスペンス:結構オススメ)
全世界にゾンビウィルスが蔓延した世界。
人類はウィルスに対するワクチンの開発に成功するも、『1日に1回のワクチンの投与を行わないと再びゾンビ化してしまう』という危険な情況から、感染者たちは『リターンド』と呼ばれて世間から迫害されていた。
しかしそんな矢先、リターンド化を抑制するためのワクチンの製造は困難で、やがて『ワクチンが不足して供給されなくなる』というウワサが世間で囁かれはじめる。
リターンドのリハビリ施設で働く看護師のケイトは、感染者である恋人のアレックスの為にワクチンを少しずつ横領して溜め込んでいたが、ある日、ウワサを信じて感染者のゾンビ化を恐れた『反リターンド過激派』が病院を襲撃し入院患者を次々と虐殺するという事件が発生。
更には実際にワクチンの供給が滞り始めた事から、彼らは隠し持った大量のワクチンを抱えて、田舎にある友人の別荘へと避難を決意するが…
ゾンビウィルスが蔓延した世界で『感染者を治療するワクチン』の供給が滞り始めた事によって起こるパニックを描いた、サスペンスホラー映画。
いわゆるゾンビ映画なのですが『ワクチンの供給が途絶える事によるパニック』を題材としたという、なかなか面白い切り口の映画です。
まあ『数少ないワクチンを巡って人々が奪い合う』という設定だけなら別にゾンビじゃなくても問題ないような話なのですが、感染者は『ワクチンを投与しなければ1日でゾンビに戻ってしまう』という設定はなかなか斬新で面白いですね。
お話としてはサスペンス要素が強めでゾンビ要素は薄めな印象。
ワクチンの供給不足から奪い合いが発生したり、政府が感染者を隔離しようとして主人公たちを拉致しようとしたり…という情況からの逃走劇がメインの展開なのですが…
反リターンドの過激派勢力が『感染者を怪物とみなして殺害してまわる』という要素のお陰でバイオレンスやアクション的な部分もあって、テンポ良くお話が展開するのは良い感じです。
またこの要素が、差別とか反社会的なテロとかの風刺として効いてるのもなかなか面白いです。
ストーリーも割と予想外の展開があったりして、最後まで先が読めずに進む感じで良く出来ていますしラストのちょっと泣ける展開も良い感じ。
オチは賛否ありそうな印象ですが、個人的には割と上手い落としどころじゃないかなぁ…と感じましたよ。
ただ不満点を挙げるとしたら、『ゾンビ映画の割にはゾンビ要素が薄すぎる』って辺りかなぁ?
サスペンス的な要素がストーリーの殆どを占めてしまっており、ゾンビ要素の方は『別にゾンビじゃなくても成立するよね?』ってぐらいのレベルなので、もうちょっとゾンビ要素を濃く絡ませても良かったんじゃないかと…
(せっかくの『反リターンドの過激派』っていう面白い設定が、あんまり活かされてないのがもったいなかったです。)
総評としましては、小粒ながらも斬新な切り口で内容的にもなかなか面白い『佳作レベルのゾンビ映画』って感じの作品ですね。
『ちょっと変わったタイプのゾンビ映画』を求めている人なら間違いなくオススメできる内容ですし、ゾンビにあまり興味が無くてもサスペンスが好きならば普通に楽しめる内容でしょう。
シッチェス映画祭で高評価されたらしいので、ホラーマニアの間でしか話題になってない感じですが、普通に良く出来たサスペンスなので興味があるならなかなかオススメ出来る一本だと思いますよ。