■■■「黒い箱のアリス」■■■
(50点/サスペンス)
父が起こした交通事故によって母親と自らの片腕を無くしてしまった少女のアリスは、人工知能を備えたスピーカーを付けた愛犬をママと呼び、周囲に心を閉ざしてしまうようになる。
そんなある日、森の中で巨大な立方体状の物体を発見した彼女は、立方体に恐る恐る近寄るとその中から『彼らを信じないで』と自分の筆跡で書かれたメモを発見。
自宅に戻ると、ほどなくして父親が『森の中で倒れていたところを救助した』という、エリカとポールと名乗る姉弟を連れて帰って来る。
謎のメモの事もあり、彼らの態度に不自然なものを感じたアリスは、2人に疑いの目を向けるようになっていくが…
交通事故で母を亡くし周囲に心を閉ざした少女のアリスが、森の中で奇妙な『黒い箱』を発見したことから不思議な事件に巻き込まれていく…という、サスペンススリラー映画。
欧州製のサスペンス映画らしく、なんとも独特な雰囲気と空気感を持った作品で、いわゆる雰囲気映画に類する感じの映画ですね。
タイトルや謎の『黒い箱』という設定からして、てっきりセカイ系(内宇宙系)の心理サスペンス的なお話なのかと思ってたのですが、予想とは違ってどちらかというとタイムループ的なネタが仕込まれたSFサスペンス的なノリの内容でしたよ。
少女の閉ざされた心を表すかのようなガラス張りの牢獄のような建物を舞台とした、独特の空気感やら美術デザインが良い味を出しており、雰囲気映画としてはなかなか悪くないテイストを持った作品といった感じ。
少女の体に取り付けられた『機械の義手』や、『AIスピーカーで人語を話す犬』といったギミックも、近未来的でありながら逆にファンタジー的な雰囲気を上手く出しています。
ただ雰囲気映画らしく、なんというか展開が矢鱈と遅いんですよね。
悪い部分まで欧州映画テイストが非常に強く感じられる内容で、とにかくお話が遅々としてなかなか進まないせいで、観ていて非常にダルいのは困りものです。
また終盤は、お話の動き出した終盤では謎の『黒い箱』を中心としたタイムループ的なお話へとストーリーが展開していくのですが、このお話がやや難解なうえに全体的に説明不足でどうにも分かり辛いんですよね。
途中までのテンポの遅さに対して終盤が急展開すぎる印象なので、もうちょっと上手くバランスを取れなかったものかと…
ラストも、結局『黒い箱の正体って何やねん?』って感じで、中途半端に投げっぱなしな印象ですし、もうちょっと心理サスペンスなりSFサスペンスなり、どちらかにお話をシッカリと振った方が良かったんじゃないなかなぁ?
総評としましては、悪くはないのですが『いまひとつ退屈な印象を受けるSF風味のサイコサスペンス映画』って感じの作品ですね。
独特のセンスを持った雰囲気映画としてのテイストは良い感じだと思うので、ちょっとファンタジーテイストのある雰囲気系のサスペンス映画が観たいというのであれば、まあまあ楽しめる一本かもしれません。
まあ、ハリウッド系のテンポの良い作品とかが好きな人にはあまりオススメはできませんが、欧州系のスローテンポで独特のテイストを持ったサスペンスとかが好きであれば、チェックしてみても良い作品ではないでしょうか…