NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「キラー・メイズ」(55点/サスペンス)

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■■■「キラー・メイズ」■■■
(55点/サスペンス)

 冴えない芸儒家のディブは、芸術家として成功できない日頃のストレスを晴らすように、恋人が留守の間に自宅の居間に巨大な段ボールの迷路を作り始める。

 帰宅した恋人のアニーは、ディブの突飛な行動に驚かされつつも迷路から出てくるように迷路の外から問いかけるが、彼が自分の作った数メートル四方程度の段ボールの迷路から出られなくなって、内部で3日間もさ迷っているという事実を知らされる。

 彼女は、迷路を破壊してなんとかしてディブを救出しようとするが、『作品が完成するまで壊さないで欲しい』という彼の要望に従って、友人のゴードンらと一緒に彼を救うために迷路の中へと侵入するが、その数メートル程度に見えた段ボール迷路の内部は、彼の心象世界を反映して『殺人トラップ』や『怪物』のうごめく巨大な迷宮と化していたのだった…



 冴えない芸術家の心象世界を反映して広大な『殺人迷宮』と化した段ボール迷路から、芸術家とその恋人たちがなんとかして脱出しようとする内宇宙もの風味のサスペンススリラー映画。

 独創的なホラー映画が多く出展される『シッチェス映画祭』に出展されて話題となった作品で、『段ボール製のお手製殺人迷路』という個性的で面白い設定が光る作品ですね。

 お話としては『とある冴えない芸術家が自宅のリビングに段ボールで迷路を作り始めるんだけど、その迷路はいつしか彼の心象世界を反映して現実の巨大迷路へと変化していき、更には彼を救おうと迷宮へと踏み込んだ恋人や友人、見物に来た近所の住人らも巻き込んで、とんでもない事態へと発展していく』みたいな感じのストーリー。

 『段ボール迷路』は、巨大化しても異界化しても『アクマでも段ボールのまま』という設定が非常に個性的で、殺人トラップやモンスターも段ボール製で、罠にかかって死んだ人間は血の代わりに『赤い紙テープ』をまき散らして死んでいくという、キッチュアバンギャルドな美術デザインが面白いです。

 この独創的なビジュアルが、芸術家である主人公の『心象世界を反映した世界観』を上手く表現しており、また『殺人迷路』を題材としてる割には重すぎないテイストになっていて、観ていて楽しい作品に仕上がっている印象。

 ただ世界観やデザインは非常に良い感じなのですが、映画そのものがサスペンスとして面白いかと言われると、正直に言って微妙なところなのは困りもの。

 妙にアート寄りの表現に尺を割いている部分が多いせいで、基本的にお話の進みが遅めで、どうにも全体的にテンポが悪いんですよね。

 『段ボール製の殺人トラップ』は面白いのに、出番はあまり無くて見せ場が少な目なのも残念なところですし、怪物も『芸術家の心象世界』という設定なんだからもっと奇抜なデザインでも良かった気がします。
 (というか『段ボールのミノタウロス』って、単に段ボールのマスクを被った変人にしか見えないし…)

 お話として山場となったり盛り上がったりするシーンも乏しいですし、オチもやや弱い感じだったので、奇抜なビジュアルが目を引く割にはどうにも物足りなさの残る作品でしたよ。


 総評としましては、『テイストとして観るべき部分はあるものの、やや盛り上がりに欠けるサスペンスホラー映画』という感じの作品ですね。

 『ビジュアル的な面白さ』という点では非常に良く出来ているので、独特のテイストやら世界観やらが気になるのであれば、チェックしておいても損はない一本だと思いますよ。

 まあでも良い意味でも悪い意味でも『シッチェス映画祭』らしい作品という感じなので、そういうノリが好きならばオススメという感じではないでしょうか…