NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ウルフ・アワー」(45点/サスペンス)

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■■■「ウルフ・アワー」■■■
(45点/サスペンス)


 記録的な猛暑のせいで人々の心が荒れて治安が悪化し、更には女性ばかり狙う連続殺人鬼のニュースが巷を騒がせる1997年のニューヨーク。


 ブロンクスに住む反体制派の人気作家のジューンは、ある事件を切っ掛けにパラノイアに陥ってしまい、トラウマから作品がかけなくなったうえに部屋から一歩も出歩くことができなくなっていた。


 外界との関りを絶って一人きりで引きこもり生活を続ける彼女だったが、ある日から、彼女の部屋の玄関ブザーを何者かが執拗に鳴らすようになる。


 インターホンで答えても全く反応がなく、昼夜を問わずに繰り返されるブサーの音に困り果てた彼女は警察に相談するも事件性が無いために取り合って貰えずに、彼女はブザーの音に強いストレスを感じるようになっていくが…

 


 とある事件のトラウマを切っ掛けに引きこもりとなってしまった女流作家が、繰り返される玄関ブザーの音にストレスを感じて徐々に精神的に追い詰められていく…という感じのサスペンススリラー映画。


 タイトルだけ聞いてもなんのこっちゃ良く分からない感じのタイトル(何か元ネタがあるんだろうか?)ですが、お話としては『過去のトラウマから引きこもり生活を続ける作家の女性が、執拗に繰り返される呼び出しブザーと作品が書けないことにまつわるストレスから、徐々に精神的に追い詰められていく』みたいな感じの状況を描いた、シチュエーションスリラー映画っぽい作品ですね。


 クセの強い作品ばかりが出展されるサンダンス映画祭』とかに出展されていた映画だそうで、本作も色々な意味でクセの強い内容になっています。


 お話としては『主人公の部屋の中』のみという閉じられた空間で、『会話劇を中心にお話が進んでいくシチュエーションサスペンス映画』という感じの展開。


 サスペンスといってもそこまで緊張感があふれるような展開という訳でもなく、基本的には主人公の女性が悩みつつも過去のトラウマを克服することが出来ずに、自堕落に悶々と部屋の中で過ごしているシーンが延々と描写されます。


 そんな映画のどこが面白いのかと疑問を抱いてしまいますが、意外とこれが映画として楽しむことで出来るレベルになっているのは良く出来ているところ。
 悶々と過ごす主人公の日常の背後で、連続殺人事件が起きていたり、スラム街で暴動が繰り広げられていたり、彼女自身も謎の呼び出しブザーの音に悩まされたり…といった具合に、『彼女の生きる狭い世界に不安の影を落とすような事件』が象徴的に描かれており、不穏な空気を上手く漂わせているのは良い感じです。


 また、彼女の『過去のトラウマとなった事件』等、あまり明確に描かれない要素も多く、色々と想像できる内容になっているのも面白いですね。


 彼女の『世界』に影響を与える友人や、食料の配達員、警官といった面々との『世界との関りあい』も面白いですし、主人公の『自堕落でありながらも何かを契機として自分を変えようとする姿』が魅力的に描かれています。


 また象徴的という意味では、様々な事件や彼女の感じる他人との関りが人生の変わり目となる小さな『切っ掛け』として象徴的に描かれていて、サスペンスというよりも『人間ドラマを中心とした雰囲気映画』という感じの作品といった印象です。


 そんな感じで雰囲気映画としては悪くない部分は多いのですが、ただこの作品がエンタテイメントとして面白いのかと言われると微妙なところ。


 お話の大半の部分で主人公が自宅から一歩も出ないので、それらしいたいした事件も起こりませんし、サスペンスとして楽しむことの出来るようなそれらしいストーリーも殆どありません。


 そこまで退屈な内容ではないものの、全体的に冗長な感じの展開が多くてメリハリが感じられないのも辛いところ。


 雰囲気映画やら芸術映画とかの視点で見ると観るべき部分は多いのですが、サスペンスとして楽しめる要素は殆どないため、普通にサスペンス的な内容に期待していると肩透かしも良いところでは無いかと…(商品のストーリー解説とかを見ると、めっちゃサスペンスっぽい描き方説明なので…)

 


 総評としましては、『ちょっと個性的で面白い切り口のシチュエーションサスペンス映画』という感じですね。


 サスペンス的な要素に期待してるとアレですが、雰囲気映画として楽しむならなかなか面白い切り口の作品だと思うので、サンダンス映画祭』で良くある『尖ったノリのサスペンス映画』が好きであればまあまあ楽しめる内容ではないかと…


 普通に観ると退屈な部分の多い作品ですので、『自分の趣味にあいそうならチェックしてみても良いかも?』って程度の一本だと思いますよ。