■■■「バッド・チェイサー」■■■
(45点/サスペンス)
過去のトラウマから、部屋から出る事すら困難なレベルの広場恐怖症に悩まされる女子高生のヘイゼルは、治療のために砂漠にある療養施設に向かう事となる。
母や事務員乗り合いの他の患者とともに、車の中の『外が見えない専用の箱』に入って車で移動することとなった彼女だったが、砂漠を移動中にマスクを着けた強盗団が彼女たちを襲撃。
ヘイゼルの存在に気づかないままに乗客たちを撃ち殺したうえで、一人の患者を拉致して逃走してしまう。
異常な事態に気付き箱から脱出した彼女は、銃で撃たて重傷を負いながらもなんとか一命を取り留めている母親を発見。
母の命を救うために単身で10キロ先の居留地に助けを呼ぶために向かう事を決意するが、ヘイゼルの存在に気づいた強盗団が口封じのために彼女の追跡を開始し…
広場恐怖症の少女が、瀕死の母を救うために強盗団に追われながら砂漠で逃走劇を繰り広げる…という、サスペンススリラー映画。
設定だけ聞くと、なんとなくワンシチュエーションもののサスペンススリラー映画っぽい感じなのですが、実際はどちらかと言えば『主人公のトラウマとか親子ドラマとかを中心としたサイコサスペンス色の強い作品』という印象ですね。
『広場恐怖症の少女が砂漠を強盗団から逃走する』という設定は、いかにも追跡劇を描いたスリラーっぽいのですが、実際の中身の方はあまり追跡劇とかは発生しません。
『過去のトラウマのために広場恐怖症になった少女が母親を救うために恐怖を克服しようとする』という流れと『なんとかして娘を立ち直らせようとする母親』と、『脳に障害を抱えた弟と共に強盗事件を成功させようとする兄弟』といった3つの要素が、メインのストーリーとなっているのですが…
それぞれの要素が、微妙に絡み合っているようでありながら独立しており『別々の心理サスペンス的なドラマ』になっている感じで、やや独特で面白い構成になっている作品という印象。
ただこの独特の構成のせいで、物凄くお話のテンポが悪いのは困りもの。
主人公が広場恐怖症のため『目的地に向かって数百メートル移動するだけ』でも恐ろしいほどに困難が生じるためになかなか話が進まないのに始まり、主人公の母親は母親でストレスからやや心を病んでいたり、犯人側も脳の外傷で障害を抱えていたり、主人公が逃走中に出会う若者もドラッグでラリってて頭がおかしくなっていたり…と、登場人物の大半がまるで『心を病んでる人の見本市』みたいな状態なせいで、健常者ばかりなら一瞬で解決するようなストーリーが全くマトモに前進しないせいで見ていてイライラさせられてしまいます。
設定やタイトルだけ聞くと『スピーディーな追跡劇』みたいな雰囲気なので、イメージと違い過ぎてちょっと面食らってしまいましたよ…
あと、『閉所恐怖症』やら『高所恐怖症』はともかく『広場恐怖症』ってあまり一般的な感覚じゃないので映像で表現するのが難しくて、主人公の焦燥感のようなものがあまり伝わってこないのも難点かなぁ?(普通の人でも、極端に高い場所や狭い場所は怖いと感じる人が多いと思うのですが、広い場所に関しては宇宙とは大海原とかじゃないとあまり共感は得られなさそう…)
ラストも唐突すぎてグテグテな印象でしたし…
ただ、オチの『ちょっと良い感じの親子ドラマ』的な終わり方は悪くはなかったかなぁ?
総評としましては、地味な内容の『やや変化球の要素が強めのサイコサスペンス映画』という感じの作品ですね。
変化球である『主要登場人物の全員が心を病んでる』みたいな要素が楽しめるようであれば、そこそこ面白い作品かもしれませんが、自分的にはテンポが悪すぎてイマイチな印象でしたよ。
強く推すような要素もあまりないですが、特殊な設定やらが気になるようであればチェックしてみても良いかもしれませんよ。