■■■「ロード・インフェルノ」■■■
(50点/サスペンス)
中年男性のハンスは、ある日、家族を連れて車で実家へと向かう事となるが、妻や子供たちのせいで出発が遅れたため腹を立てながら高速道路を速度オーバーで運転を行していた。
そんな最中、追い越し車線を矢鱈とゆっくりと走る白いバンに遭遇。
彼は苛立ちながらバンに対して煽り運転を仕掛け、運転手の老人に挑発的な態度を取りながらバンを抜き去ってしまう。
しかし、次のガソリンスタンドで彼たが給油していたところ、白いバンの老人が彼らの前に現れ『煽り運転への謝罪』を求めてきたことから口論に発展。
老人を無視してガソリンスタンドを後にした彼らだったが、彼らの後を白いバンがどこまでも追跡してきていることに気づき…
『煽り運転をした相手が実はサイコパスの殺人鬼だった』という設定の、オランダ製のサスペンススリラー映画。
『煽り運転』に絡んだ事故や事件というのは日本でもこのところ話題になっていますが、確かアメリカだかでも同じような『煽り運転した相手が殺人鬼だった』という題材で新作が作られていた気がするので、やはりどこの国でも同じような事が問題になって事件が起こったりしているという事でしょうか?
『煽り運転した相手から執拗に命を狙われる作品』というとスピルバーグの「激突!」なんかが有名で、割とメジャーなモチーフの作品ではあるのですが、本作の場合は追跡してくる運転手がガチのサイコ殺人鬼として描かれており、サイコスリラー的な要素が強めの内容という印象。(車を降りて家まで追いかけてきてガチに殺しにくる。)
お話としては、そのまま『高速道路で煽り運転したドライバーと揉めて口論になったところ、実は相手はガチのキ●ガイ殺人鬼でした』という、ホントにそれだけのお話。
一応、『煽り運転』は事件の切っ掛けではあるもののアクマで切っ掛けにしかすぎない感じで、そのあとは『恨みを買った殺人鬼から家族が執拗に付け狙われて命を狙われる』というような展開。
住所を突き止めて実家まで殺すために追いかけて来てみたりと、異常なまでの粘着っぷりは異様で怖いですが、逆に「激突!」みたいなカーチェイス要素等はあまり濃くありません。(パッケージを見ると、いかにもカーアクションっぽいですが…)
主人公を追いかけてくるサイコ殺人鬼はなかなか良い味を出していて、化学防護服を着た殺人鬼が『劇薬の殺虫スプレー(大量に吸い込むと死ぬし肌に触れると焼けただれる)』をを手に追いかけてくるというシチュエーションは、ビジュアル的にも精神的にもなかなか異様な雰囲気がして怖いです。
いったん謝罪を求めてから筋を通して殺そうとする辺りや、一度殺すと決めたら異常に粘着質で容赦がないのもいかにもサイコパスっぽいですし、殺人鬼のキャラは非常に良く立っている印象。
ただ残念なことに、逆に主人公側のキャラにはいまひとつ魅力が感じられないんですよね…
主人公が無駄に短気なうえにプライドばかり高くて、様々な『トラブルを回避するチャンス』を何度も棒に振って勝手にピンチに陥るのが観ていてイライラします。
むしろ『冷静沈着な殺人鬼』(まあサイコパスなんですが…)よりも粗暴な主人公の態度に見ていて腹が立つシーンが多いので、観ていて『コイツは殺されても仕方ないかな?』と思えてしまうのは困りもの。(笑)
主人公たちの家族も、無駄にパニックに陥って『勝手に事態を悪化させる』みたいな展開が多くて、なんか色々な意味でストレスが溜まってしまいましたよ。
というか『冷静に主人公たちだけの命を狙う殺人鬼』よりも、パニックに陥って『子供や老人の歩いている歩道や住宅地を車で暴走する主人公の奥さん』の方がよほど怖かったのは自分だけ?
あと、カーチェイスやら主人公の実家やらと色々と舞台を変えながらお話が進むことで、お話に広がりを持たせて退屈させないような構成になっているのは良いのですが、全体的に山場に乏しいことや、終盤の展開がちょっとグテグテでラストも矢鱈と唐突な感じだったのは、ちょっと残念なところかなぁ?
総評としましては、妙にイライラさせられるうえに『やや盛り上がりに欠けるサスペンススリラー映画』という感じの作品です。
主人公たちのキャラのせいもあって、観ていて『ストレスが溜まる内容』なので、そういう意味でもちょっと観る人を選ぶ作品かなあ?
(殺人鬼よりも『周りの迷惑を顧みない主人公たち』の方が怖いというのは、なかなかブラックで面白い切り口ではありますけど…)
ただ不満点もあるもののそれなりに面白い部分も割と多いので、設定等が気になるようであればチェックしておいても良い作品かもしれませんよ。