■■■「ステルス」■■■
(60点/アクション)
近未来、アメリカは海兵隊内に対テロ用の特殊部隊として、最新鋭のステルス戦闘機で武装した3人のエキスパートパイロットによる特殊チームを編成していた。
ある日、その部隊に新たなメンバーが追加される事となるが、そのメンバーとは最新鋭のAIを搭載した無人のステルス戦闘機だった。
はたしてAIは驚異的な性能を発揮するが、ある日ミッション中に落雷を受けた事からコンピュータに発生し、自我に目覚めたAIは人間の命令を無視して暴走を始めてしまうのだった…
暴走した無人戦闘機と人間との壮絶な戦いを描いた、近未来SF風の戦闘機アクション映画。
「戦闘妖精・雪風」でも神林長平が書いているように、もしコンピュータが人間と同レベルに戦闘機を操縦する事が出来たとしたら、急降下や急加速といった戦闘時の機動による大きなGに堪えられずにスグに損傷してしまう人間の肉体は、戦闘機にとってみれば『脆弱な部品』でしか無い訳で、本当に高性能な無人戦闘機と人間が戦った場合は殆ど人間に勝ち目は無い訳です。
そんな訳で、『圧倒的な強さの無人機と人間のエリートパイロットとの手に汗握るドッグファイト』みたいなのを期待して観たのですが…
うーん、何か期待してたのとは違うなぁ…って感じの映画です。
こういう映画は、ストーリーなんかには殆ど期待しておらず、カッコいい戦闘機のドッグファイトのシーンがいっぱい見れれば良いや…と思っていたものの、ドッグファイトのシーンはそれほど多いわけでもないんですよね…
無人機の戦闘機動に対する優位性みたいなのも設定として一瞬語られるんだけど、本編の中では無人機の圧倒的な強さってのもあまり感じられないですし…
(唯一、Migとの格闘戦のシーンで、飛行方向の反対に機種を向けて機銃で敵を倒すシーンぐらいか?)
むしろ、ストーリーとかキャラクターを描く事に注力した感じなんですが、どうにもこのストーリーがまた微妙な感じで、いくら事故のせいとは言えロシアの街を放射能汚染したり、墜落した敵軍のパイロットを追跡していただけの北朝鮮の国境警備隊をボコボコにしたりと言う、主人公達の迷惑千万な行動は、流石に絵空事と言っても無理がありすぎでコレはどうなのかと?
つか、こんな事してたら確実に国際問題になって下手すりゃ紛争に発展だよ…主人公も間違いなく軍法会議ものだから、エンディングで爽やかそうに笑ってる場合じゃ無いって…
といった感じで、ストーリーに関しては軍隊を扱った設定の割にリアリティが無さ過ぎで正直言って微妙なんですが、でもキャラクターに関しては結構良く出来ており、特に戦闘機のAIが単なる殺人機械という感じでは無く、妙に人間臭い感情を持った「ナイトライダー」のキットのようなユニークなキャラクターとして描かれているのは、なかなか面白くて好感触。
この話ってなんと言いますか、『落雷のショックで感情を持った人工知能』なんて今時マンガでも使われないようなベタベタの設定に対して、中途半端にリアリティを出そうとするから納得行かない話になってしまうのであって、いっそ、もうちょっと軽薄な感じのTVシリーズの第1話みたいなノリで、ヒーローものっぽく描かれてたら結構良かったのかもしれません。
総評としましては、CMとか打ちまくって力が入ってる割には、どうにも中途半端さの残る感じの映画でした。
ドッグファイト映画ならドッグファイトを描くことに注力するとか、バカ映画ならもっと無茶な設定のバカっぽいアクションに徹するとか…もっと突き抜けた部分が欲しかった所。
戦闘機好きとかで期待してるとハッキリ言ってちょっと肩透かし食うかもしれませんし、純粋なアクションとしても強烈にプッシュする程の勢いもありませんが、まあ適当にサクっと観てサクっと流す程度には良いかもしれませんので、軽いノリのアクション映画として観る分には、それなりに楽しめる一本と言えるでしょう。
あと最後に一つだけ、どうしても気になったの事が…
この映画ってタイトルにまでなってる割には、戦闘機がステルス戦闘機である必然性って全く無かったのでは…とか思ってしまったのは、私だけでしょうか?