■■■「キサラギ」■■■
(70点/ミステリー:オススメ)
2007年2月4日、一年前に謎の自殺を遂げたB級アイドル「如月ミキ」の熱狂的なファン達が、ファンサイトの管理者である『家元』氏の呼びかけによって都内某所の一つの部屋に集まって追悼会を開催する事となる。
集まったメンバーは、主催者の『家元』の他に『オダ・ユージ』、『スネーク』、『安男』、『いちご娘』の5人の男達。
彼らは各々に自慢のキサラギ・ミキに関するお宝グッズを自慢し始めるが、そんなうちにメンバーの1人であるオダ・ユージが『如月ミキの死は自殺ではない、何者かに殺されたのだ!』という推論を語り始めた事から、事態は一気に急変していく…
一つの部屋に集まった5人の男(オタク)達が、とあるアイドルの死の謎の真相に迫っていくという、シチュエーションミステリー映画。
昨年公開された『オタク映画』としてはかなり秀逸な出来という事で、『オタクならば観ておかねば…』という事で鑑賞させていただきました。
というか、死んだアイドルの名前が『如月ミキ』(如月千早+星井美希?)って…コレは、やっぱ「アイドルマスター」のファンなら外せないでしょう!!
(まあ実際にはアイドルの名前は、単なる偶然の一致なんでしょうが…)
作品の内容としては、閉じられた一つの部屋を舞台に繰り広げられる、いわゆるシチュエーションミステリー的な感じのお話です。
序盤の単なる『オタクを面白おかしく描いたような展開』から、ストーリーが進むにつれて、あれよあれよという感じで『新たな真実がつまびらかになっていく』という構成は、何となく「十二人の怒れる男」(←そんな大層なもんじゃないか?)を彷彿とさせるようで、なかなかにテンポも良くて非常に良い感じ。
オタクの描き方はややステロタイプすぎる気もしますが、そこまで嫌らしい描き方はされて無いですし、別に嫌な気分は受けません。
流れに沿って二転三転していくストーリー展開もなかなか面白いですし、謎解き要素もツッコミどころは少なくないながらも割と良く出来ていると思います。
ただ、一つだけストーリーの核心に触れる部分なので敢えてツッコミを入れさせてもらうなら…
隠し文字で書きますが『実際には「サラダ油は発火温度が高いため、ロウソクの火では燃えない」という所だけは、ちょっと設定に無理があったかも?』
特に上手いと感じたのは、物語冒頭の『単なるオタク自慢』みたいなシーンが、実は謎解きの鍵となる手がかりが仕込まれておりストーリーの伏線となっているという構成で、コレは『無駄の無い作りだなぁ…』と普通に感心しましたよ。
閉じられた空間での『会話劇』に徹しているにも関わらず途中で退屈させない構成や、要所要所でちょっと笑わせながらも、最後では『ちょっと良い話』的なオチで締める展開も、定番といえば定番ですが悪く無い感じですし…
敢えて苦言を呈するなら、一番最後の『オチ』は『特に必要なかったんじゃないかなぁ?』と感じたのは私だけ?
総評としましては、別にオタク映画として観なくても『ごく普通にミステリーとして良く出来た邦画の良作』だと思います。
コメディ風のミステリー映画とかが好きな人ならば、ごく普通に観ておいて損は無いタイトルだと思いますので、『何となく気になっている』という人ならとりあえず観ておいて良いレベルの作品だと言えるでしょう。
主演の5人の俳優も何気に個性派で良い味のキャラぞろいですし、そっちを目当てで観ても後悔しないタイトルだと思いますよ。