NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「BUG/バグ」(55点/サスペンス)

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■■■「BUG/バグ」■■■
(55点/サスペンス)

 アメリカのオクラホマ州の酒場で働き、過去に原因不明の失踪事件により息子を失ったアグネスは、かつての夫であり『妻への暴行』によって刑務所に入れられているジェリーが仮釈放される事に備えて、夫の暴力から逃れる為に安普請のモーテルに身を潜めて生活を送っていた。

 そんなある日、彼女は酒場の同僚から不思議な雰囲気を持つピーターと言う一人の男性を紹介される。

 彼女は自分と同様に、どこか暗い陰をもったピーターに惹かれてゆき、モーテルで一緒に生活をするようになるが、ピーターは殆ど目に見えないような小さな『虫』に悩まされており、やがて彼女自身も『虫』の存在によって悩まされるようになって行く…


 エクソシスト」のウィリアム・フリードキン監督による、正体不明の『虫(バグ)』に悩まされるとある男女の顛末を描いたサスペンスホラー映画。

 タイトルやパッケージだけ見ると、一見『生物パニックホラーかな?』という印象も受けますが、正体不明の『虫』の存在によってパラノイアに囚われていく男女の姿を描いたお話で、『果たして彼らの恐れる『虫』は実際に存在するのか?』といった感じのノリの、サスペンス的な要素の強い作品ですね。

 何でも元々は舞台劇で、その劇を観て感銘を受けたフリードキン監督が、この作品を是非とも映画化してみたいという事になって監督した作品だそうで、舞台劇らしく場面の転換は少な目で会話劇が中心のため、ちょっとだけシチュエーションスリラー的な印象も受けます。

 いや実際に映画を観てみても、『よくこの作品を映画化しようと思ったなぁ』という風に感じるほどに、映画化が困難…というか『舞台向け』の作品だと思うのですよ…

 お話の舞台はメチャクチャ狭いですし、絵的に凄いシーンや見せ場も全く無いですし、正直言って映画として観ると、冗長すぎてちょっと退屈な印象を受けるような内容です。

 しかしフリードキン監督らしく、『どことなく不安を掻きたて、情緒不安定にさせるような演出』は非常に見事で、次に『何が起こるか分からない』という不安感を持続させるのが上手くて、適度な緊張感を持って最後まで観れるように仕上げているのは流石と言わざるを得ません。

 また、パラノイア」という『誰にでも起こりうる脅威』を描いたテーマの見せ方もなかなか面白いのではないかと…

 ただ個人的には、物語が終盤に向かっていくにつれて『コレは、どう転んでも救いようが無い展開になるな…』というのがモロに予想出来てしまい、終盤は精神的にちょっと辛い部分もあったかなぁ?
 (別にハッピーエンド至上主義者という訳じゃ無いですが、ソレにしてもコレは結構『鬱』が入る展開だったので…)


 総評としましては、作品としては非常にコンパクトにまとまった、なかなか良作のサスペンスホラーだと思います。

 ただ、エクソシスト」とかのような『エンターテイメント性』を兼ね備えているかと言われると、ちょっと微妙な所なので、そういう意味では観る人間を選ぶ作品と言えるでしょう。
 とにかく、全体的に非常に地味な作品ですしね…

 ある意味で、フリードキン監督が「エクソシスト」でも描こうとした『恐怖の根源は我々自身の内側にある』というテーマをストレートに描いた作品とも言えるので、監督のファンならば観ておいても損は無い一本かもしれませんよ。