■■■「インストーラー」■■■
(65点/SFサスペンス:結構オススメ)
2025年のパリ。
連続殺人鬼であるニコロフの追跡中にパートナーである妻を殺されて休職していた刑事のダヴィットは、上司から『同じ殺人鬼のもの』と思われる新たな犠牲者の死体が発見された事から、復職し捜査を再開することを決意する。
配属された新たなパートナーと共に事件の捜査を開始したダヴィットは、行方不明となっている犠牲者の妹のエレーナが事件の鍵を握っているのではないかと考えるが、やがて今回の事件に他の殺人事件とは異なる奇妙な特徴がある事に気付いていくのだった…
フランスの新鋭監督であるジュリアン・ルクレールによる、近未来のパリを舞台としたSFサスペンス映画。
本作のタイトルである『インストーラー」ってのは、本編で登場する『人間の記憶を改ざん(上書き)する機械』の事を指しているのではないかと思うのですが、何か妙にダサっぽい感じでタイトルでちょっと損をしている気がします。
本編の内容は非常にスタイリッシュでセンスの良い映画で、映像センスのカッコ良さに加えて、小物の設定や美術デザインにも凝っており、近未来もののSFが好きなら映像センスだけの為にも一見の価値のある作品ですね。
ストーリーの方も、かなり凝った構成になってるのですが、むしろコチラはちょっと
『凝りすぎている』みたいな印象。
物語が2箇所の舞台で並行して進んでいくのですが、最初はその関連性が全く分からないため、中盤までは頭の中が疑問符でいっぱいになってちょっと混乱してしまいました。
最後まで見ると『ああ、なるほど!』と納得するようなお話なのですが、伏線や人間関係の整理に追われてしまい、アクションや映像を落ち着いて楽しめなかった雰囲気もあるので、ストーリー上で重要で無い部分はもうちょっと分かりやすい『紋切り型』的なキャラや展開でも良かったかも?
(『遠隔医療技術』とか結構な尺を割いてた割に本編に殆ど関係ないし、殺人鬼の動機や設定も今ひとつ不明瞭だし…)
あとフランス映画らしく、全体的にテンポのスローなシーンが多いため、ストーリーの難解さもあって中盤で思わず『少し眠くなってしまった』のは、ちょっと難点かな?
お話そのものは、非常に良く出来ていて面白かったと思うんですけどね…
総評としましては、全体的になかなか良く出来た作品なので、SFサスペンス系が好きな人なら『ごく普通に楽しめる良作SF映画』だと思いますよ。
映像センスとかも素晴らしいので、そういう『近未来的な絵作り』とかが好きなら尚のこと楽しめる作品だと言えるでしょう。
(「ブレードランナー」とかの『ちょっと退廃的な未来像』が好きならば、結構良いテイストの作品だと思います。)
ただ、割と集中して観ないと中盤でホントに訳が分からなくなる恐れがあるので、そこそこ精神力に余裕があるときにどうぞ。