■■■「BANSHEE バンシー」■■■
(55点/モンスター)
ある大学生のグループが、休暇を利用してアメリカのコネチカット州の片田舎の森の中へとキャンプに訪れるが、森の中で変幻自在に姿を変える『得体の知れない怪物』に襲撃されて仲間を次々と惨殺される。
彼らは命からがらに森の中に住む解体業者のジャックの家へと逃げ込むが、逃げ込んだ先で家人が何日も前から家に立てこもって謎の怪物と戦い続けている事と、怪物が数日前に発見された何十年も前の事故車から出現した事を知らされる。
その頃、婦人警官のジュエルは森の中でキャンプ中に行方不明になった学生を探す為にキャンプ場へと訪れるが、キャンプ場で無残に切り裂かれたテントと学生たちの死体を発見し…
森の中に突然現れた『変身能力を持つ正体不明の怪物』が次々と人間を襲うという、モンスターホラー映画。
タイトルで「バンシー」(原題も「BANSHEE!!!」)とか付いてますが、「バンシー」って言うと『アイルランドの伝承に登場する、家人の死を予言する「泣き女」の妖精』の事な訳ですが…
本編に登場する怪物は『変身能力を持ったコウモリ人間』と言う感じで、まず『何処が「バンシー」やねん』という根本的なツッコミを入れたくなりました。
(てっきり「バンシー」が呪いか何かで人を殺していくオカルトサスペンス風味の作品かと思ってたのに…)
…とまあ、そういう根本的な部分のツッコミはあるものの、その辺を除けばそこそこ良く出来た作品でした。
お話としては、なんというか『ノリだけで作られたモンスター映画』みたいな感じですねぇ。
『ストーリーに関する設定』が物凄くぞんざいな印象で、そもそも怪物が「バンシー」だとしても『アイルランドの妖精が何故にアメリカ南部の片田舎に居るのか』は一切不明。
主人公たちの人間関係とかも殆ど語られてませんし、学生たちが『何のためにそんな片田舎に来たのか』もほぼ語られずに、舞台のバックグラウンドに関する説明とかが殆どありません。
そのクセに『怪物の設定』だけは矢鱈と仔細に作りこまれていて、怪物が『どうやって人間に擬態するか』とか『怪物の弱点』とか、妙に細かい部分まで設定されている印象。
何というか『怪物が派手に暴れる事さえ出来れば、後はどうでもいいや』って感じの、ある意味で潔い(いさぎよい)作りなのですが、逆にキャラクターや登場人物に余りにも感情移入が出来ないので緊張感が薄いのは難点かも?
実際に映画の方も、序盤からモリモリと怪物が登場して登場人物を片っ端から殺しまくるので、テンポが良くて退屈しないって点では良い感じです。
オチの見せ方も、なかなか捻りの効いた面白い演出の仕方だと思いますし…
ただ、先述のとおり舞台背景の説明不足なシーンが多くて、特に序盤では設定が良く分からなくて視聴者置いてけぼり感が強く、『お話にイマイチ入り込めなかった』のは勿体無い部分かなぁ?
描きたい部分に注力するのは良いのですが、やはり物事には限度があると言う事でしょうか…
総評としましては、色々とツッコミどころは多い作品ですが『イキオイだけは感じられる』というタイプの『そこそこ楽しめるレベルのB級モンスター映画』ってところでしょう。
細かい事を気にせずに『とりあえず怪物の暴れる姿が観たい』という人ならば、それなりに楽しめると思うので、何かの息抜き程度に観るにはちょうど良い感じの作品だと言えるでしょうか…
まあ基本的にたいした事の無い映画ですのでオススメする程のものでは無いですが、モンスター映画が大好きな人で『暇つぶし程度に何かの作品を観たい』というのであれば、『得るものも無いけど退屈もしないような作品』ですので、観ておいても良いレベルの一本かもしれません。