■■■「運命のボタン」■■■
(60点/サスペンス)
1976年のヴァージニア州。
ごく普通の中流家庭であるノーマとアーサーの夫婦の元に、明け方の早くに奇妙な箱が届けられる。
彼らは不審に感じつつも箱を開封してみると、そこには『赤いボタンの付いた謎の装置』と『夕方の5時に伺います』と書かれた紙が入っていた。
果たして、その日の夕方にスチュワードと名乗る不気味な男性がノーマの元を訪れるが、彼は『24時間以内にこのボタンを押すと、どこかで見知らぬ誰かが死ぬ代わりに、あなたは100万ドルを受け取る事が出来る』という驚くべき提案を夫婦に提示する。
折からの不運で生活の苦しい状態に陥っていた彼らは、良心の呵責に駆られながらも結局はボタンを押してしまうが、その事によって彼らは想像を絶するような驚くべき事態へと巻き込まれていくのだった…
ボタンを押す事で見も知らぬ何者かが死ぬ代わりに100万ドルが手に入るという『謎のボタン』を手に入れたとある夫婦の運命を描いた、SFサスペンス映画。
リチャード・マシスンの同名の短編小説を映画化したものなのですが、この作家さんは「地球最後の男(アイアム・レジェンド)」や「ミステリーゾーン(トワイライトゾーン)」の原作を書いた人だという事で、ノリ的には確かに「トワイライトゾーン」的なイメージの強いお話ですね。
お話的には序盤が普通のサスペンス映画っぽい展開なので、てっきりマトモなミステリーなのかと思ってたら、中盤辺りから『火星探査計画』とか『陰謀論』とかが絡んでくるという想像の斜め上を行くような『なんじゃそりゃ?』って感じの展開になって、ちょっとビックリしてしまいましたよ。
ただ、そんな度肝を抜くような『トンデモ設定』の割には、ストーリーの起承転結は非常に良く出来ており、序盤の伏線の張り方とか伏線の回収とかも非常に上手く、何とも言えない不気味さを残すオチの描き方とかも良い感じで、なかなかに面白い作品ではありました。
しかし、不気味な感じの映像の『雰囲気作り』も上手くて良いのですが、雰囲気を出すために引っ張りすぎているのか、人物を描くシーンとかで全体的にちょっと冗長に感じる部分が多かったのは残念なところ。
もともとが短編で、それこそ「トワイライトゾーン」の1エピソード程度でも収まりそうな感じのストーリーなのに、それを2時間弱の尺を使って描いているので、中盤辺りがちょっとダレ気味な印象を受けましたよ。
序盤の人物描写や中盤の展開はもっとサラっとした感じで、軽く流す程度の展開でも良かったんじゃ無いかなぁ?
(特に、スチュワードの嫁さんの出てくるシーンとか、あんなに無意味に引っ張る必要があったのかと…)
お話そのものは面白かったんですが、80~90分ぐらいの尺で十分な作品だった気がしますよ。
あと、どうでも良いことなのですが、本作の主人公って『NASAの職員』なのですが、旦那がNASAに勤めてて嫁と共働きなのに『生活が出来ないぐらいお金に困っている』って設定にちょっと驚きましたよ。
NASAって超エリートって印象があるんですが、そんなに薄給なんかいな?
総評としましては、色々と細かい不満点はあるものの『ホラー的な雰囲気のSFミステリー映画』としては、なかなか良く出来た良作レベルの作品だと思います。
「トワイライトゾーン(ミステリーゾーン)」とかのTV映画向けの短編ホラーとか、ブラックなノリのダークファンタジーとかが好きな人であれば、なかなか楽しめる作品ではないでしょうか?
本格的なミステリーとかサスペンスを期待してると、ちょっと肩透かしを食らうかもしれませんが、ミステリーホラー的なノリが好きならは見ておく価値はある作品だと思いますので、そういう系列の作品が好きならばオススメの一本ですよ。