■■■「エルム街の悪夢(2010リメイク版)」■■■
(50点/スラッシャー)
エルム街で暮らす女子高生のナンシーは、ある日、友人の一人がダイナーで食事中に謎の自殺を遂げるという事件に遭遇し、その直後から『手に鉄の爪を付けて全身が焼けただれた不気味な男』に襲われるという夢を見るようになる。
そんなある日、彼女は友人の一人から周りの人間も同様の『鉄の爪の男』の夢を見ており、しかも『夢の中でその男に殺されると現実世界でも死んでしまう』という驚くべき噂を聞かされ、果たしてその噂どおりに周りの人間が次々と変死を遂げていっているという恐るべき事実を知る。
彼女は事件の真実を知り生き延びるために、夢の中に現れる『鉄の爪の男=フレディ』の正体を探ろうとするが…
ホラーの巨匠であるウェス・クレイブン監督の出世作である「エルム街の悪夢」のリメイク版に当たる、スラッシャーホラー映画。
モダンホラーファンならジェイソンと並んで知らない人は居ないであろう、夢の中に現れる殺人鬼『フレディ・クルーガー』の登場する同名タイトルの、マイケル・ベイ製作によるリメイク作品ですね。
同じマイケル・ベイによって製作された「13日の金曜日」のリメイク版は、Part.1~3をダイジェスト的に子気味よくまとめた非常に良く出来たリメイク作品でしたが、本作の方はと言いますと…
うーん何と言うか、あまり特徴の無い『普通のリメイク作品』って感じですねぇ。
ストーリーに関しては、ベースとなる「エルム街の悪夢」の1作目を殆どなぞるような展開ですが、ややサスペンス要素を強めた感じでストーリーは少し分かりやすくなったかも?
映像に関しては、最新の特撮技術を使っているだけあって流石にオリジナルよりも洗練されている感じですし演出とかも悪くない印象。
ただ、単純にオリジナルの『印象的なシーン』を再現したって感じの作りで、シーンの繋ぎの部分とかの作りがちょっと雑で、全体的に『ブツ切り感』が感じられたのは気になった部分かも?
あと本編内で意外とフレディによる犠牲者が少ないので、襲われている主人公達に今ひとつ緊張感が足りなさそうに見えるのも難点かな?
また、最大の見せ場と言える『犠牲者が襲われるシーン』の演出とかもオリジナルと殆ど同じで、オリジナルを知ってると殺害シーンに面白味が無いのは残念なところですねぇ。
(でも、オリジナルの見せ場の一つである『ベッドに引っ張りこまれて天井めがけて血が噴き出すシーン』が無かったのは残念だなぁ…)
とまあ、これだけなら『堅調な作りのリメイク』って感じなんですが、本作の最大の残念な部分は、とにかく『フレディのキャラが薄い』というひと言に尽きます。
オリジナルのロバート・イングランドのインパクトが凄すぎたってのもあるんですが、とにかくフレディの『演技』が薄い。
あの芝居がかった動きや台詞回しは、やっぱオリジナルには遠く及ばなくて、頑張って再現しようとしているのは認めるのですが、単なる『フレディのマネをしてる変なオッサン』になってしまっている印象。
友人曰く、リメイクのフレディの芝居がかった演技が『楳図かずおにしか見えない』って表現も、何となく納得です。
更に困った事にはフレディ役の俳優さんの『顔』も薄くて、鷲鼻で個性的な顔立ちだったオリジナルに比べると、リメイクの俳優さんは物凄くのっぺり感じの顔で、特殊メイクをしちゃうと全く印象に残らない顔になっているのは困り物。
やっぱ、ジェイソンは誰が演技しても何とでもなりますが、フレディに関しては『ロバート・イングランドのキャラがあっての存在なんだなぁ…』と再認識しましたよ。
(あの人はフレディの格好をしてなくても、物凄い存在感がありますからね…)
あと気になった部分としては、オリジナル版のストーリーでは、フレディって確か亡霊になる前から『幼児を狙う連続殺人鬼』だった気がするんですが、本作だと単なる『サディストのペドフィリア(幼児性愛者)』になってしまっているような気が…
(確かオリジナルでは『幼児を殺しまくった連続殺人鬼なんだけど裁判の精神鑑定で無罪になった』とかで、怒った住民がリンチにして焼き殺したって設定だったと…)
何かリメイク版の『ペドフィリアだから焼き殺してもOK』みたいな展開は、流石に如何なものかと?
総評としましては、映画としての出来はそこまで悪くは無いんだけど『オリジナルと比べると不満点が目に付くレベルのリメイク』ってのが正直な感想ですねぇ。
駄作と斬って捨てるほど完成度の低い映画では無いので『オリジナルを見た事が無い人』であればそこそこ楽しめそうな気はしますが、それならばいっそ『オリジナル版を観て欲しいなぁ…』って気もしますし…
まあオリジナルを知ってる人が、ネタ程度に観て楽しむ程度には悪くない作品なんじゃ無いでしょうか?
とまれ個人的には、どうにも物足りなさばかりが残るリメイク作品でしたよ。