■■■「ON AIR オンエア 脳・内・感・染」■■■
(45点/モンスター)
雪の降りしきるアメリカ北部のポンティプールという田舎町。
地元のラジオ局の人気アナウンサーであるマジーは、いつものようにラジオの生放送を開始するが、放送中に町中で『バンを銃を持った男たちが包囲している』という人質事件が発生したという臨時ニュースが入る。
その事件は警察の出動により収集されるが、その後も『診療所の前に何百人もの人間があつまり暴徒のように中に押し入ろうとしており、近くに正体不明の軍の車両が出動している』という報告を皮切りに、町中で視聴者から混乱を伝える報告が相次ぎ町全体で異常事態が発生している事を知る。
しかし、それだけの事件が発生しておきながら警察当局から一切の情報開示がない事を不審に感じた彼らは、いったい町で何が起こっているのかの真実を突き止めて報道するために、仲間たちと一緒に情報収集を開始するが…
『言葉』を媒介として感染して人間をゾンビ化させる謎のウィルスの恐怖を描いた、ゾンビもののモンスターパニック映画。
地方のラジオ局を舞台として『外の世界』で起こっているパニックを伝えるという、いわゆるシチュエーションスリラー形式のホラー映画ですね。
先日、同じようなアイデアで「レディオ・オブ・ザ・デッド」ってタイトルの作品がありましたが、確かに『現場の混乱を音声のみで伝える』ってのは予算をかけずにパニック映画を作るには上手い手法ではありますね。
視聴者が状況を想像する事によって、実際に低予算でパニック映像を描くよりもずっと臨場感のあるイメージが得られますし、本作でも『現場の生中継のシーン』はかなり不気味で気持ち悪い印象を受けたので、試み的には成功していると言えるかも?
まあ『一発ネタ的な映画』だから良いのであって、世の中がこんな映画ばかりだと流石に観るのが辛くなりそうですが…
一応、本作でも中盤以降は放送局にゾンビが侵入してきたりして、それなりにパニックシーンも描かれるのですが、そちらの方は地味な映像でインパクトもあまりないですし、ホントにアイデア勝負的な作品ですね。
ただ、シチュエーションや設定のアイデア自体は悪くないですし、作品全体の雰囲気や映像やイメージも割とよく作られているので、総じて悪い作品ではありませんけどね。
あと、本作の『音声のみのシチュエーションスリラー』という設定以外の部分での特徴は、ゾンビ化のウィルスが『言葉』を媒介として感染を広げていくという事。
こちらはアイデアとしては面白いとは思ったのですが、ウィルスが『言葉』を媒介にするって設定は幾らなんでも無理がありすぎる印象なので、どちらかというともっと『オカルト的な設定』にした方が無理が無くて良かったのでは…
ただ『言葉』を媒介にするという設定のお陰で、『言葉ゆえの意外な弱点』があるって設定はなかなか面白かったですね。
しかし面白い設定をせっかく作ったのに、オチがちょっとグテグテな感じで投げっぱなしになってしまったのは惜しかった部分と言えるかなぁ…
この辺りのプロットがもう少ししっかりと作りこまれてれば、もっと面白い作品になったと思うので、その辺はちょっと残念な所でした。
総評としましては、シチュエーションスリラー的なノリや『言葉を介して感染する』というアイデアは面白いものの、それ以外の部分がありきたりで『地味なB級ホラー』に収まってしまっているという、なんとも残念な感じの作品です。
料理の仕方次第ではもっと個性的で面白くなった気がするので、もうひと工夫あれば良い作品になったと思うんだけどなぁ…
まあ『シチュエーションや設定の面白さ』という点では、割と見るべきところのある作品だと言えるので、ゾンビものの作品が好きな人であればチェックしておいても損は無い一本だとは思いますよ。
ちょっとオススメするには弱いですが、総じて『悪くない雰囲気の作品』ではありました。