NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「スノーホワイト・デッド」(55点/モンスター:結構オススメ)

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■■■「スノーホワイト・デッド」■■■
(55点/モンスター:結構オススメ)

 ゾンビによって文明が崩壊し無政府状態となった世界。
 雪深い田舎町で暮らすエドとマットは、人間を狩ってその肉をとある老夫婦に配達するという汚れ仕事を行う事で、日々の食い扶持を稼いでいた。

 しかし自分たちの行為に疑問を持っていた彼らは、老夫婦が町を後にするという話を聞いた事から自分たちもこの町を出て、新たな生活を始めるべきではないかと考えるようになる。

 そんな矢先にエドが、とあるビデオに写っていた『メアリーと名乗る女性を探しに行く』と言い残して一人で旅に出てしまった事から、取り残されたマットは途方に暮れる事になってしまうが…



 ゾンビによって文明が崩壊した世界で暮らす人々と2人の男たちの奇妙な生き様を描いた、モンスターホラー映画。

 「スノーホワイト・デッド」なんてタイトルが付いているので、てっきり「白雪姫」みたいな童話を題材としたモンスター映画なのかと、全然そんなのとは関係のない、単に雪国が舞台の「北の国から・オブ・ザ・デッド」とでも言うような感じのゾンビ映画です。

 今回は油断してて何も気にせずに本作をレンタルしたのですが、最近のB級ホラー好きの間では『地雷メーカー』として名前を轟かせており、Z級の映画を大量にリリースし続ける「DEEP RED」というレーベルの作品だったので、思わず『ゲッ、これは失敗したかも?』覚悟完了してから鑑賞してみたのですが…

 なかなかどうして「DEEP RED」とは思えない高いレベルの完成度の作品で、逆の意味で驚かされましたよ!!
 (というか「DEEP RED」レーベルは、普段は何であんな嫌がらせみたいな超低予算映画を連続でリリースするんだろう…私ですら避けて通るようなキワモノ作品に利益をペイできるレベルでの需要があるんだろうか?)

 まあ完成度が高いといっても、あいかわらずZ級の超低予算映画って事には替わりは無くて、『良く出来た自主制作映画?』ってツッコミを入れたくなるようなレベルではあるのですが、内容の割には独特の世界観やキャラクターの構築が非常に良く出来ている印象ですね。

 お話としては、ゾンビのせいで文明が崩壊した世界に暮らす2人の男のたどる運命を描いたような感じなのですが、ちょっとだけ群像劇とかロードムービー的な雰囲気のある作品です。

 メインは2人の男たちの視点を中心にお話が進んでいくのですが、途中で男たちが関わった別の登場人物の視点がマルチサイト的に導入されてて、少しだけオムニバスっぽい雰囲気になってたりと構成がなかなか凝っています。

 ただ凝った話の作りの割には構成力がイマイチ足りてないのか、序盤とか人間関係や世界設定が分かり難くて、見ててちょっと混乱してしまいそうになるのは難点ですかねぇ…

 でも世界観の構築の仕方やキャラクターの描きかたが非常に上手く、『ゾンビになってしまった息子に食べ物を与えるために人間を殺し続ける老夫婦』とか『鎖で繋いだゾンビを目の前に不倫相手とのSEXをする主人公』とか、限られた予算やリソースの中で『世界そのものが狂っている』という雰囲気を上手く表現しているのには素直に感心させられました。

 ただ『何かを象徴するようなシーン』や『印象的なシーン』を撮ろうとガンバっていたり、『前衛的でスタイリッシュな演出』を見せようとしてるんだけど、センスと予算が今ひとつ足りなくて余り成功していないという辺りは、まあまあご愛嬌といったところかな…

 また低予算ゆえに特撮レベルなんかも酷いもので、ゾンビのメイクとか残虐表現は映画の専門学校の生徒辺りが作ったような感じだし、襲撃シーンとかもビックリするぐらいショボいので、そっち方面には微塵も期待しない方が良いでしょう。

 しかし『各国の映画祭で大絶賛』みたいな事が宣伝文句として使われていたので『また、そんな事を言って、フカしてるだけでしょ?』と思いつつ観てたのですが、確かにコレならばホラー系の映画祭では絶賛されてもおかしくない作品だと思いました。

 まあ、当然ながら『映画祭のインディーズ部門』という前提付きではありますけどね…


 総評としましては、「DEEP RED」レーベルという事で全く期待してなかったんだけど、予想以上にセンスの良い『掘り出し物のゾンビ映画といった感じのなかなか面白い作品でしたよ。

 超低予算映画なので万人に薦めるのは無理な感じですが、インディーズ系の映画に抵抗が無くてゾンビ映画が大好きな人であれば、とりあえず観ておいても損は無い一本だと思います。

 ショボくて残念な部分も多いですし非常に荒削りな部分も目に付きますが、独特の世界観やストーリー構成とか観るべき部分も多いので、低予算である事を割り切って楽しむ分には個人的には結構オススメの一本ですよ。