■■■「iPS -恐怖の暴走細胞-」■■■
(55点/サスペンス)
原因不明の遺伝子病で幼い息子を亡くし妻とも別れたジェフ・バートン博士は、息子を奪った難病の治療方法を突き止めるために再生遺伝子の研究に打ち込んでいくようになる。
研究の成果を認められドイツのとある研究所のプロジェクトに参加する事になった彼は、同じ研究所のレベッカ博士から生物の再生速度を飛躍的に高める『イースター遺伝子』という遺伝子の説明を受け、彼女と一緒に研究を進める事を承諾。
しかし、深夜に見知らぬ研究所員がレベッカ博士の研究室から勝手に検体を持ち出している現場に遭遇した彼は、犯人の目的を探るためにその男の後をつけるが…
生物の回復力を飛躍的に強化させる『イースター遺伝子』という謎の遺伝子と、その秘密に関わることとなった男がたどる運命を描いた、医療系のサスペンス映画。
タイトルにiPSとか付いてますが、別に内容の方はiPS細胞とかとは何の関係もない、未知の遺伝子とその研究を巡る争い題材にした医療系サスペンスといった感じのお話です。
ただ一応『医療系サスペンス』の体裁は取っていますが、そこまで医学とか科学的な要素は強くなくて、むしろ『息子が謎の遺伝子病にかかった事によって思いがけずに人生の歯車を狂わせられる事になった男の運命を描いたヒューマンドラマ』みたいな印象が強い感じ。
雰囲気映画的なテイストのある映画で、主人公の味わう苦悩や『どうしてこんな事になってしまったのか…』というのを共感させるような、丁寧な人物描写とかキャラクターの背景の描写は良く出来ていて良い感じなのですが…
物語の核心となる『イースター遺伝子』に関する説明や謎解きが中途半端で、なんというか『だから結局、何やねん?』って感じになってしまうのが残念な印象。
まあ、主人公の味わう無力感や鬱な感じのテイストといった描きたい方向性は分かるので、その辺の要素は映画のメインテーマではないという事なのでしょうが、どうにも観ててモヤっとしてしまいます。
オチも物凄く投げっぱなしな感じなので、観終わった後にも今ひとつスッキリしません。
あと主人公も含めて登場人物が矢鱈と独善的で、作中の誰にも感情移入出来ないような構成なのは辛いところかなぁ?
欧州製の映画(ドイツ/オーストラリアの共作)なので、そういう微妙にモヤっとするような要素が好きなお国柄なのでしょうけど、どうにも素直に楽しめずに『何だかなぁ…』といった気分になる作品でしたよ…
総評としましては、全体的にそこそこ良く出来てはているのですが、『観ていてどうにもストレスの溜まる作品』といった感じです。
医療サスペンス的なノリの雰囲気映画としてのテイストは良い感じだと思うので、そういう『ちょっとドロドロした感じの人間ドラマ』系の作品が好きな人ならばハマれると思うので、そういうノリが好きであればチェックしてみても良い作品だと言えるでしょう。
『各国映画祭で高い評価を得たSFスリラー』という事で期待していたのですが、何か自分には今ひとつ肌に合わない感じの映画でしたよ…