■■■「複製された男」■■■
(55点/ミステリー)
大学で歴史の講師を務めるアダムは、ある日、同僚から勧められた映画をレンタルして観る事になるが、その映画に自分と瓜二つの男優が出演しているのを発見する。
好奇心から男の事を調べて、その男がアンソニー・クレアという男優である事を突き止めたアダムは、彼の芸能事務所や自宅の側へと訪れて彼のことを遠くから監視しているうちに、どうしても直接会って話をしてみたくなり彼へとコンタクトを試みる。
そして実際に会った彼らは、自分たちが外見や声はおろか生年月日や傷跡の位置まで全く同じという事に衝撃を受けるが、彼らの出会いは彼らの過去にまつわる思わぬトラブルへと発展していくのだった…
一人の男性が『自分と瓜二つの男』と出会った事によって思いがけないトラブルへと巻き込まれていくという、ミステリー映画。
同名のミステリー小説を映画化した作品のようなのですが、色々といま一つ釈然としない感じのお話ですね。
タイトルだけみるとちょっとSFっぽい印象も受けますが全然そんな要素は無くて、ノリとしてはサイコスリラー的な感じの内容で『自分とそっくりの男性と出会ってしまった男が、彼らの過去にまつわる思いがけないトラブルに巻き込まれていく』というような感じの展開なのですが…
主人公の2人が『外見だけでなく生年月日や声や傷跡まで同じ』という設定に謎がありそうで謎が無さそうだったり、解明されそうで解明されなさそうだったりするという何ともモニョっとする感じの作品です。
最初の『アングラ集会』みたいなのやラストのアレも何なのか良く分かりませんし、その辺は原作の小説を読んだらキチンと意味が分かるのかしらん?
雰囲気映画っぽいノリがある作品なので、D・リンチやキューブリックみたいな『なんかソレっぽい雰囲気演出』として、あるがままに受け入れれば良いのかもしれませんが…
まあ良く分からない部分はさておくとして、ミステリーとしての出来の方はなかなか意外性のある作りで良い感じ。
単純に『自分とそっくりの男』と会っただけでは事件は起こらないので、どういう風にお話をふくらませていくのかと思いきや、『実はこの主人公たちに思いがけない過去があって…』という展開は、なかなか予想外で先の読めない展開で面白いです。
ただ男たちが出会って事件へと発展するまでの展開が長くて、序盤~中盤までに事件の起こらない冗長なシーンがかなり多めなのは辛いところ。
何か伏線が仕込まれているのかと思いきや、そこまで重要な伏線も貼られてなかったみたいですし、前述のとおり『引っ張った割には最後まで投げっぱなしのまま終わってしまう謎』が多いのも気になりました。
あと、お話のメインとなる要素の2人の過去にまつわるトラブルってのが、どう考えても自業自得な内容で、どちらの主人公にも全く感情移入できずに肩入れ出来ないのは難点と言えるかなぁ?
まあでも、不満点もあるものの終盤の展開とかなかなか先が読めなくて面白かったです。
ただ説明不足や投げっぱなしの要素も多いので、何か観終わった後でモヤっとするものの残る作品ではありましたよ…
総評としましては、なかなか『変り種のミステリー作品』としては面白かったと思うのですが、『ちょっと見る人を選ぶ作品かも?』って感じの映画ではありました。
雰囲気映画的な『良く分からないノリの含まれるサスペンス』とかが好きな人ならば楽しめる内容だと思いますので、そういう系列のミステリーが好きであればチェックしておいても損は無いかな?
ちなみにパッケージとかを見ると『あなたの脳力が試される』みたいな事を書いてますが、そこまで理解不能なレベルで難解な作品ではありませんので、あまり構えないで観ても大丈夫だと思います。