■■■「ライブ・ランナー」■■■
(55点/サスペンス)
増え続ける移民問題に欧州の各国は門戸を閉ざし受け入れを拒否するようになった近未来にドイツ政府が打ちたてた独自の政策。
それは、移民たちに「イミグレーションゲーム(移民ゲーム)」と呼ばれるゲームに参加して勝利したもののみを受け入れるという事だった。
そのゲームの内容は、移民たちは「ランナー」となって郊外のある地点からスタートし、政府の送り込んだ「ハンター」たちの攻撃を逃れながら殺されずにゴールとなるベルリンのTV塔をまでたどり着くというもので、その様子はTVショーとして中継され人気番組となっていた。
そんなある日、銀行マンのジョーはハンターたちの横暴を見かねてゲームに参加していた移民の男性を助けるが、ハンターたちとのトラブルが原因で誤ってハンターの一人を殺してしまった事から、自分自身もゲームに参加する事を強要される事となり…
ディストピア化した未来のドイツで、イミグレーションゲーム(移民ゲーム)というデスゲームに参加させられる事となった一人の男性の運命を描いた、アクション風味のサスペンススリラー映画。
いわゆるディストピアな未来社会を舞台としたデスゲームものの作品で、最近では同ネタ多数すぎてちょっと食傷気味のジャンルですが、本作はその中でも更に思いっきり低予算方向に舵を切った作品という事で…
総じて出来が悪い訳でもないのですが、色々と『うーん?』って感じのツッコミをいれたくなるような映画ではあります。
お話としては、『移民の受け入れ問題の解決策として国の主導で「イミグレーションゲーム」というデスゲームを行うようになった未来のドイツで、移民をかくまったせいで政府の刺客とトラブルを起こした男性が自分自身もゲームへの参加を強要されることとなってしまう…』といった感じのお話。
「メイズランナー」と「ハンガーゲーム」を足して2で割ったようなタイトルからして、独自の世界観を持ったディストピア的な未来世界を舞台にしたような作品の印象を受けますが、どちらかというと『デスゲーム』の制度だけが導入された現代(近未来)という感じで、まるっきり現代社会が舞台の映画という印象。
大がかりな仕掛けや舞台を準備する予算が無かったのかもしれませんが、デスゲームも『普通に街中を逃げる主人公(ランナー)たちが、政府の放った刺客(ハンター)に追いかけまわされる』というそれだけの内容で、絵的にも単に『現代社会の街中でチンピラの集団に追いかけられている人たち』にしか見えないため、観ていてどうにも地味な印象です。
作中にも未来を感じさせるような描写は全く登場せずに、この『デスゲーム』の法律が実在したら明日からでも実現できそうな内容のため、未来社会っぽい題材の割にはSF的な要素が全く感じられないのは辛いところ。
ただSFっぽさは無いにせよ、普通にサスペンス映画として見るとそれなりにテンポも良く、ちょっとだけアクションシーンとかもあったりして、そこそこ観れる内容なのは良い感じ。
ストーリーも一筋縄ではいかない感じで、予想外の裏切りがあったりとかでなかなか先が読めずに、刺客となるハンターたちのキャラも割と良い味を出していてそれなりには楽しませてくれます。
ラストの、ある意味で『どんでん返し』と呼べる展開もなかなか皮肉が利いていてブラックで面白かったりと、そこそこ観れる部分もある印象。
(まあラストの展開は賛否両論ありそうですけど…)
やはり、SFジャンルの割にはSFっぽさが無くて地味すぎる事と、全体的に低予算すぎて見せ場が乏しくて盛り上がりに欠ける事が欠点だと思うので、もうちょっと近未来的な雰囲気を感じさせるビジュアル的な工夫とかギミックとかがあればもっと良くなったと思うので、その辺は残念なところでしたよ。
総評としましては、なんとも地味な内容の『デスゲームを題材にしたSFサスペンススリラー映画』という感じの作品ですね。
見るべき要素が全くない訳でも無いのですが、見どころとなる部分が地味すぎていま一つな印象はぬぐえないので、『もうちょっとビジュアル的に見栄えのする内容だったらなぁ…』というのが正直なところでした。
『デスゲーム』ものが大好きであればまあまあ楽しめなくは無いレベルではあると思うので、そういうジャンルが好きで気になるのであればチェックしてみても良いかもしれませんよ。