■■■「ヴィーガンズ・ハム」■■■
(60点/サスペンス)
中年夫婦のヴァンサンとソフィーは結婚30年を越えて肉屋を営んでいたが、店は赤字経営のうえにすっかり倦怠期を迎えてギクシャクとした生活を送っていた。
そんなある日、店屋を襲撃する過激派のヴィーガンの若者と郊外で偶然遭遇した彼らは、若者に抗議をしようとした際に誤って殺してしまうという事故が発生。
死体の処理に困ったヴィンセントはその肉をハムに加工して処理するが、妻がそのハムを誤って商品として店頭に出してしまったところ、そのハムが思いがけず絶品で大人気商品になってしまう。
彼らは人気商品を販売して店を救うために、理想の肉を手に入れるために『ヴィーガン狩り』を開始するが…
肉屋を営む中年夫婦が誤って殺害した『ヴィーガンの肉』を店で売り出したところ大人気商品となってしまい、商品を仕入れるために『ヴィーガン』の殺害を繰り返すこととなる…という、フランス製のコメディ風味のスリラー映画。
劇場公開時に評判が良かった作品で、ようやく配信開始されたのでチェックしてみたのですが、確かになかなか良く出来たブラックユーモア系のコメディホラー映画ですね。
お話としては、『肉屋の夫婦が殺害した「ヴィーガンの肉」をハムにして売り出したところ大ヒット商品となってしまい、新たな商品を「仕入れる」ために次々と殺害を繰り返していく』みたいな感じの展開。
まあ確かに、牛肉とかでも高級肉はエサをキチンと管理されて適度な運動等で品質管理された食肉ですし、雑食の動物は野菜のみを食べさせた方が肉の臭みが無くなって美味しくなると言いますし、『ヴィーガンの肉』が美味しいというのは理にかなった設定ではあるのですが…
肉食を忌避する『ヴィーガンの肉』が実は『とんでもなく美味しい高級食材だった』というのは、なかなかにブラックでパンチの効いた設定と言う印象。
全体的に『ヴィーガンへの皮肉』をパロディの中心として描かれているのですが、『そりゃ殺したくもなるわ』というようなヴィーガンの変人っぷりがフランス映画らしい皮肉を交えてユーモラスに描かれており、テンポの良いブラックユーモア作品として楽しませてくれる内容となっているのは良い感じ。
またヴィーガンへの風刺に加えて、倦怠期の中年夫婦である主人公たちが『絆を取り戻すお話』という側面もあり、『倦怠期の破局寸前の中年夫婦』が殺人夫婦として覚醒して絆を深めていくという展開は無駄にカタルシスがあります。
ただ、主人公たちが殺人鬼として『覚醒』するまでが意外と長くて、そこまでの『倦怠期の夫婦の人間ドラマ』の部分がちょっと退屈なのは気になるところ。
ヘタレな旦那と合理主義者の奥さんというキャラの掘り下げは悪くないのですが、全体的にもうちょっと展開が早くても良かったかなぁ?
殺害シーンに関してもほとんど『ダイジェスト版』みたいなノリなので、もっとブラックな描写を多く見せて欲しかった気はしますよ…(まあ、あまり残虐描写が無いので、そういうのが苦手な人でも観やすいというメリットもあるのですが…)
あとラストの展開は割と熱くて良いのですが、オチはちょっとアッサリしすぎな印象があったので、もう一波乱ぐらい盛り上がる展開があっても良かったかも?
総評としましては、『なかなかに良く出来たブラックユーモア系のサスペンススリラー映画』って感じの作品ですね。
コメディ系のサスペンススリラー映画が好きな人であれば、間違いなく楽しめるような内容ですので、設定とかを聞いて気になっているのであればチェックしておいても損は無い一本だと思います。
個人的には、もうちょっと『ハチャメチャなノリの作品』を期待していたのですが、フランス映画だけあってか『ややまったりなテイストの作品』という印象でしたので、その辺はちょっと注意が必要かもしれませんよ。