NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「愛と欲望の毛皮/ダリオ・アルジェント」<13 thirteen ~マスターズ・オブ・ホラー2~>(70点/オカルトホラー)

イメージ 1

■■■「愛と欲望の毛皮/ダリオ・アルジェント」<13 thirteen ~マスターズ・オブ・ホラー2~>■■■
(70点/オカルトホラー)

 金と女に目が無い毛皮職人のジェイクは、ストリップ劇場で見かけたシャンナというストリッパーに執心していた。

 そんなある日、ジェイクの元にとある猟師から『上等なアライグマの毛皮が手に入ったから買わないか』と持かける電話がかかってくる。

 彼は半信半疑で田舎の猟師の元を訪れるが、その家で猟師親子が異常な変死の仕方をしているのを発見。
 しかし、猟師宅で発見した毛皮の上質さに魅入られたジェイクは、警察に通報する前に猟師の家からこっそりと毛皮を持ち去る事とするが、やがてその毛皮に携わった人々に次々と奇妙な現象が起こり始め…


 世界的に有名なホラー監督が競演する「マスターズ・オブ・ホラー」の2期シリーズである「マスターズ・オブ・ホラー2」より、ダリオ・アルジェント監督によるオカルト風のサスペンスホラー映画です。

 アルジェント監督というと、サスペリアフェノミナ等の傑作で知られるホラーファンなら知らない人は居ないであろうビッグネームで、前シリーズの「愛しのジェニファー」もシリーズで1、2を争う程の傑作だったため、今回も非常に期待が持たれたのですが…

 いやはや、やっぱアルジェントは凄いわ!!

 こうして「マスターズ・オブ・ホラー」のように『何本もの色んな監督撮った作品』をシリーズとして続けて観ていると、こういうビッグネームの監督の作品がいかに優れているかが良く分かりますね。
 話の導入部の引きこみ方や、テンポの良さ、興味の持続させかたなど、演出や作り込みの素晴らしさが光ります。

 本作は、まあ一言で言うと『呪いの毛皮』とでも言うようなお話なのですが、設定やストーリーはコテコテながらも、とにかくホラーとしての観せ方が非常に上手い。

 内容的には『毛皮の呪いに触れた人間が次々と変死を遂げていく』…みたいなお話なのですが、『さあ、来るぞ!!』というシーンでしっかりと恐怖シーンが描かれるというお約束的な上手さに加えて、残虐シーンもかなりエグくてグロいシーンをしっかりと見せてくれるという非常に『分かってるなぁ』と思わせる作り。
 呪いに触れた人間が淡々と自傷行為を繰り返して死に到るシーンは、表現の残虐さと被害者の冷静さとのミスマッチさもあってなかなかの怖さです。

 こんなコテコテの話なのに、アルジェントが撮るだけでこれだけ面白くなってしまうってのは、やっぱ反則だよなぁ…
 (S・キングが書くだけで、コテコテでショボい設定の小説が『とたんに面白くなる』ってのと同じような感覚ですね。)

 ただ不満点を上げるとしたら、本作は60分の尺では明らかに監督の描こうとした内容が描ききれて居らず、どうにもボリューム不足を感じる部分が多い点。

 残虐シーンも全体的にボリューム不足で、この倍ぐらいの被害者の数は欲しかった所ですし、呪いの設定に関しても明らかに説明不足で今一つスッキリしない印象。

 ラストもやや『中途半端な投げっぱなし方』だったりと、ちょっとキレが無い印象を受ける(アルジェントは普段も投げっぱなしのオチが多いけど、本作はガツンと来るような『インパクトのある投げっぱなし』にはなってない)部分も多くて、各所で『やはり60分ではボューム不足だったんだろうなぁ…』というのが感じ取れてしまうのが辛い所ですね。

 まあ、無理矢理詰め込みすぎて全てが中途半端になってしまうよりは良いので、その辺のバランス感覚の良さは流石だなと思いますが…
 可能なら本作は、90分尺とかで改めて完全版でも撮って欲しいようなお話ですね。


 総評としましては、とにもかくにも『極めて正統派の良作オカルトホラー』といった感じの作品ですね。

 今シリーズ(「マスターズ・オブ・ホラー2」)の作品としては今まで鑑賞した中では間違いなく最高の出来なので、ホラーファンならばビデオ化された際には観ておいて損は無い一本でしょう。

 正統派すぎて『アルジェント臭さ』が弱い部分もありますが、残虐シーンの表現とかにアルジェントらしい悪趣味さは見て取れるので、ファンでもそこそこ納得の出来だと思いますので旧来のファンにも普通にオススメしておきますよ。