NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「黒猫/スチュアート・ゴードン」<13 thirteen ~マスターズ・オブ・ホラー2~>(65点/サスペンスホラー)

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■■■「黒猫/スチュアート・ゴードン」<13 thirteen ~マスターズ・オブ・ホラー2~>■■■
(65点/サスペンスホラー)

 自分が『詩人』であろうとするあまりに、人気作である『幻想小説作家』としてのギャップに苦しみスランプ状態に陥ったE・A・ポーは、雑誌に詩篇を売ってなんとか食いつなぎながら酒びたりの生活をしていた。

 しかし、自暴自棄状態の彼に追い討ちをかけるように妻が重病を患い、大切な家財を売ってでも生活するしか無くなった彼は、極度のストレスから精神的に追い詰められ、やがて全ての元凶は自分の飼っている『黒猫』にあるという妄想に囚われはじめる…


 世界的に有名なホラー監督が競演する「マスターズ・オブ・ホラー」の2期シリーズである「マスターズ・オブ・ホラー2」より、スチュアート・ゴードン監督によるゴシック風のサスペンスホラー映画です。

 S・ゴードン監督と言えば、ラヴクラフト原作のクトゥルフ系のホラー映画を撮るのが好きな事は有名(前シリーズもクトゥルフ神話ネタだった)ですが、どちらかというとやはり「ZOMBIO(ゾンバイオ)/死霊のしたたり」の監督といった方が通りが良いでしょう。
 (まあ、「ZOMBIO」も『ハーバード・ウエスト』が主人公なので、一応はクトクルフネタなのですが…)

 そんなゴードン監督の新作が、幻想小説の草分けとも言えるE・A・ポーの「黒猫」って『「ZOMBIO」の監督がゴシックホラーとか大丈夫なの!?』と思って観てたのですが…

 なかなかどうして、コレが意外と良くハマっています。

 ポーの「黒猫」と言えば『殺した奥さんを地下室の壁に塗りこめちゃう』という、今更ネタバレを気にする必要も無いぐらいに有名な作品ですが、本作では作者のポー本人が主人公となっている事からも分かるように結構なアレンジが施されています。

 まあ、もともと「黒猫」は非常に短いうえに地味な話なのでアレンジを施すのは当然と言えば当然なのですが、このアレンジに利かせ方がなかなか面白くて、普段は『ゴシックホラー的な落ち着いた色調の展開』に時折挿入される、いかにもゴードン監督らしい『悪趣味な残虐描写』がアクセントとなっており、なかなかケレン味の効いた良い感じの展開に…

 主人公が精神的に追い詰められていくプロセスと、彼の心理状態がもたらす『幻想的な悪夢のような光景』の描写が面白くて、夜の街を黒猫の陰に追い掛け回されるシーンとか結構気に入りました。

 ただ序盤が少々冗長な感じで、ポオ本人が『詩人だった』という史実を知らないと『なんのこっちゃ?』という感じの展開になってしまうかもしれないのが、やや難点かも?

 また、ストーリーを捻りまわしすぎたせいか『ラスト付近の展開はちょっと強引すぎるかなぁ…』って感じですし、オチに関しても賛否両論ありそうな気はしますが、まあ個人的には許容範囲かなぁ?


 総評としましては、古臭すぎずモダンホラーすぎる訳でも無い、なかなか良くバランスの取れたサスペンスホラー映画に仕上上がっております。

 ゴードン監督で「黒猫」というタイトルを聞いた時にかなり不安を覚えた作品ですが…ぶっちゃけ『普段の作品よりも面白い』と感じたので、いっそこれからはこのノリで新作を撮っていってくれないかなぁ?

 今回の「マスターズ・オブ・ホラー2」のシリーズの中では、意外とオススメの作品ですよ。