■■■「コリン LOVE OF THE DEAD」■■■
(60点/モンスター:結構オススメ)
謎のウィルスの影響で死者が蘇って人間を襲い始め、大混乱へと陥った世界。ロンドンに住む青年のコリンは、ゾンビに噛まれてしまったせいで自分自身もゾンビウィルスに感染してしまう。
彼は自身の肉体のゾンビ化がするなか、以前のかすかな記憶を頼りに『とある場所』へと向かって移動を開始するが、彼の行く手にはゾンビと人間との戦いによって大混乱へと陥った街が広がっていた…
ゾンビ化してしまった一人の青年の取った行動と辿る運命を『ゾンビの視点』から描いたという、異色のモンスターホラー映画。
よく、ゾンビ映画というと『低予算映画の象徴』みたいな事を言われますが、本作は何と製作費わずか45ポンド(約5800円)という超低予算で作られながらも、その完成度と独創性から各国の映画祭で高く評価されたという、なかなか異色な作品です。
しかし、いくら低予算と言えども流石に実際の制作費が5800円って事は無いと思うのですが、なんでも特撮のメイクアップアーティストであるルームメイトとその友達やらが、殆どロハでSFXやら出演やらに協力してくれたという話で、おかげでこの超低予算で作品を実現できたのだとか…
そんな訳で、実際には額面以上に特撮やらもちゃんと作られており、その辺のケーブルTV局の製作したZ級のホラー映画なんかよりも良く出来ている感じです。
それよりも本作を『異色作』たらしめているのは、何と言っても『ゾンビ化した主人公の視点から物語を描いている』という事。
人間が他のゾンビに襲われているシーンを淡々と横目に眺めながら、荒廃した街を歩いていくという感覚は、なんとも不思議な独特のテイストに溢れていて良い感じです。
またゾンビと化した事で、逆に攻撃的な人間が『恐怖の対象』として描かれるのも、なかなか面白い視点の転換ですね。
ゾンビというのは『群れ』で襲ってくるから怖いのであって、自分を『1個人のゾンビの視点』として見ると、動きはトロいしロクな武器は無いしで『ここまで頼りないものなのか』と感心させられましたよ。
ただお話そのものは、自分がゾンビだけに『自主的に何かのイベントを起こす』という展開が殆ど無いために、やや冗長な展開になりがちですが…
そこは、『生き残った人間同士のドラマ』や抗争やらを『第三者的な視点から傍観する』という作りになっており、退屈させずにドラマを楽しめるような構成になっているのは非常に上手いですね。
この辺は設定も含めて、まさに『アイデアの勝利』と言えると思います。
全体に漂う荒廃した街の退廃的な雰囲気を楽しむ『雰囲気映画』としても十分に良い味を出していますし、悲喜こもごも(というか救いの無い)人間ドラマや、ラストの『何とも言いようのない切ない展開』も含めて非常に秀逸で、新機軸のゾンビ映画としては十分に高く評価して良いレベルの作品だと言えるのでは無いでしょうか。
総評としましては、作品の独自性もさる事ながら全体的な構成もなかなか良くできた『非常に個性的で面白いゾンビ映画』と言って良いレベルの作品でしょう。
低予算ゆえに映像面や派手さは期待しない方が良いですが、お話としてもコンパクトにまとまっており退屈させないですし、なによりも『この作品の独特の雰囲気』は一見の価値があると思います。
『ゾンビからの視点』というアイデアの勝利といった部分もありますが、何ともやるせない気持ちにさせてくれる演出やストーリーの上手さも含めて、『ゾンビ映画が好きであれば一度は観ておく価値のある一本』だと思いますよ。