(65点/サスペンス)
1979年のアメリカ。
臨月を迎え出産を間近に控えたベスは婚約者との旅行中に何者かに拉致され、荒野の真ん中にある廃工場のような場所に置かれたバスタブの中で目を覚ます。
お腹には縫合された跡があり、おなかの赤ちゃんを何者かに抜き取られた事に気づき絶望しながらも脱出を図ろうとするが、工場内に自分と同じような目にあわされた何人もの女性がこの場所に閉じ込められている事を知る。
工場の中で自分たちの赤ちゃんが檻に閉じ込められているのを発見した彼女たちは、赤ちゃんの足に付けられたタグと自分たちのお腹の中に埋め込まれたタグの色が対応しており、『自分の赤ちゃんを見つけ出して救う為には、他の母親を殺してお腹の中からタグを取り出して消去法で確認するしか無い』という事を知らされるが…
何者かによってお腹の赤ちゃんを盗まれた母親たちが自分の子供を取り戻す為に命がけで戦うという、監禁タイプのサスペンス映画。
一応、『実話をベースとしたサスペンス映画』という事になっているようですが、こんな衝撃的な事件が実際にあったらもっと大ニュースになってると思うので、流石にどこまでが『実話』なのかは怪しいところでしょう。
たとえ赤ちゃんが分からなくなっても、とりあえず全員を連れて帰って遺伝子検査をすれば良いだろ…とか思う訳ですが、そこは1979年という遺伝子検査の手法が確立される以前の舞台設定で上手く交わしています。
しかし設定だけ聞くと『母親たちが赤ちゃんを巡って血みどろの殺し合いをするの映画なのか』と思ってしまいますが、実際にはそこまで凄惨な展開ではなく殆どの犠牲者は『とりあえず子供たちを連れて脱出する方法を探す』といった行動を取る中、一人だけ暴走した母親が他の親を殺して回るという展開で、割と全うなサイコキラーものサスペンスのノリに近い印象。
主人公たちが脱出方法を探す中で、犯人が敷地内に放った猟犬に追い掛け回されたり、事件の真相を知るための手がかりへと近づいて行ったりといった展開で、監禁ものにありがちな『お話の変化は少なさ』をフォローしている感じで、退屈しない作りになっているのはなかなか上手いですね。
お話の組み立てもなかなか良く出来ており、序盤の辺りで提示された手がかりとかが投げっぱなしにならずに消化されており、エグい話なのに観ててスッキリとした気分になれるのは面白いです。
逆に小ぎれいにまとまりすぎているので、予告編とかから受ける『凄惨なイメージ』を期待してると、意外と普通すぎてちょっと肩透かしを食らってしまうかもしれません。
個人的にラストは『その、ドンデン返しみたいな設定は必要だったのか?』というツッコミを入たくなりましたが、その設定がラストの『ちょっと爽やかな感じのエンディング』に繋がっていくのは面白い作りだと思いましたよ。
でも中盤まで頑張ってたヒロインの旦那が、終盤で空気過ぎるのはいかがなものかとって感じでしたけどね。(笑)
総評としましては、低予算で小粒ながらも意外に良くまとまった『佳作レベルのB級サスペンス映画』と言えるでしょう。
『母親どうしが赤ちゃんを取り返すために相手のお腹を引き裂いてタグを奪い合う』とかってインパクトのある設定のとおりの凄惨な話を期待してると、ちょっと肩透かしを食らわされるかもしれませんが、お話としてはなかなか良く出来た面白い話でしたので、監禁もののサスペンス映画とかが好きであればチェックしておいて損は無いレベルの一本です。
過剰な期待を抱かなければ普通に楽しめる作品だと思いますので、気になるようであればとりあえず観ておいても良い作品だと思いますよ。