NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「新感染 ファイナル・エクスプレス」(65点/モンスター:オススメ)

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■■■「新感染 ファイナル・エクスプレス」■■■
(65点/モンスター:オススメ)

 奇妙な病気の噂が広まりつつあり情勢の不安定な韓国のソウル市内。
 証券会社に勤めるソグは別居中の妻の元に娘のスアンを送り届けるために、ソウル発プサン行きの高速鉄道KTXに乗車する事となる。

 しかし乗り込んでいた乗客の一人が唐突に凶暴化し怪物と化して、他の乗客を次々と襲い出すという事件が発生。
 噛まれた人間は同じように怪物(ゾンビ)と化して、車内には一瞬でパンデミックが広がり地獄絵図と化してしまう。

 車両の連結部分にいたソグは、出産を控えた夫婦のヨングク、ジンらと共になんとか怪物たちを隔離する事に成功するが、既に列車の外の世界でもパンデミックが発生して街が大パニックに陥っている事が判明。

 プサンがゾンビの隔離に成功したという噂を聞いた彼らは、生き残った乗客たちと共になんとかして終点のプサンまで無事にたどり着こうとするが…



 ソウル発プサン行きの特急列車の中でゾンビによるパンデミックが発生し、生き残った人たちがなんとかして安全地帯のプサンまでたどり着こうとする…という、モンスターパニック映画。

 設定を観て分かるとおり韓国製のゾンビ映画なのですが、これは歴代のアジア圏のゾンビ映画の中でも屈指の完成度の作品といって良いレベルかもしれません。
 かなりスケール感もありお金もかかっており、ガチにエンタテイメントを目指したゾンビ映画という感じの一本ですね。

 お話としては、『とある父子がプサン行きの特急列車に乗るんだけど、車内でゾンビによるパンデミックが発生、ゾンビを隔離したり脱出しようとしたりといった紆余曲折を経て最終目的地のプサン目指して列車で向かう事となる…』という感じのストーリー。

 設定だけ聞くと『閉鎖環境型のよくある感じの小規模ゾンビ映画』っぽいですが、実際の作中では下車して救助隊と合流しようとするシーンがあったり、線路が塞がってて違う電車に移らないとならないような展開があったりと、外の様子なんかもそこそこ描かれていてそれなりに大規模なパニックシーンも見せてくれるため、あまり小規模な印象や閉塞感を感じさせずにそこそこのスケール感を出しているのは、なかなか上手いです。

 本作の特徴はとにかく物凄くスピード感がある事。

 お話の展開が非常に早くて、主人公たちに次から次へとトラブルや苦難が訪れるので、ホントに観ていて息つく暇もないようなノンストップ感があります。

 また展開が早ければ列車も速いしゾンビも速い、ソンビはまさにリメイク版の「ドーン・オブ・ザ・デッド」並みの全力疾走ゾンビなうえに、感染の速度も半端なく早いため、感染した人たちが次々と雪崩をうってまさに『特急列車』のような勢いで押し寄せてくるのは非常に迫力があって見応えがありました。

 自分はどちらかといえば『ゾンビは動きが遅い方が好き派』なのですが、本作のコンセプトの一つと思われる『疾走感』には、このゾンビの特性は非常に合っている印象で、まさに「ファイナル・エクスプレス」のタイトルに偽りなしという感じでしたよ。

 完成度の高い部分としては、ゾンビの迫力だけではなく主人公たちのキャラクターも非常に丁寧に描かれており、メインとしては『主人公たち父娘』と『出産を控えた夫婦』、『高校生カップル』の6名を中心としてお話が描かれていくのですが、この6人がそれぞれ非常に良いキャラをしており、キャラが多くて取っ散らかった感じにならない程度に良いバランスでそれぞれのお話をまとめているのは好印象。

 特に主人公の『最初は冷たい合理主義者なんだけど、危機を乗り越えるうちに人間として成長して親子の絆を取り戻していく』という人間ドラマ的要素は、ベタベタだけどなかなか熱いものがありました。

 その辺の人間ドラマの要素が活かされたラストのオチの落としどころも上手いですし、全体的にお話として非常に良くまとまっています。

 ただ良く出来ている部分も多いのですが不満点も無い訳ではなく、特に個人的に気になったのは『ゾンビとの戦いに爽快感が無い事』かなぁ?

 主人公たちの武器が基本的に『バット』や『警棒』、『素手』といった具合なのでゾンビへの攻撃が全体的に地味なんですよね。

 ゾンビと戦うシーンでも、ゾンビたちを『押しとどめる』とか『やり過ごす』というのがメインという感じで、ちょっとカタルシスが薄いです。

 一般受けを狙ってあまりグロくなりすぎない方向性に舵を取ったのかもしれませんが、ゾンビとの闘いのシーンではもうちょっと爽快感があっても良かったんじゃないかとは思いましたよ。

 あと、終盤の『クズ野郎は生きてても死んでても迷惑』みたいな展開は流石にちょっとクドすぎた気がするので、あそこまでしつこくネタを引っ張らなくても良かったかも…

 ちなみに余談ですが、本作はなかなかキャッチーで内容も分かりやすくて良い邦題だと思うのですが、『うっかり続編が出ちゃった時に困るタイプの邦題だよなぁ…』という気がしたのは自分だけ?
 (原題は「TRAIN TO BUSAN」(プサン行き列車)らしいですが…)


 総評としましては、非常にスピード感があり良くまとまった『ジェットコースタームービー的なゾンビ映画って感じの作品ですね。

 ゾンビ映画が好きな人であれば普通にオススメできる作品ですし、ゾンビ映画としてはマイルドな内容なので『グロイのは苦手だけどちょっと興味がある』みたいな人にも割とオススメできる一本かと…

 個人的にも、もしも続編が作られたら是非とも見てみたいと思わせるような完成度でしたので、タイトルのノリからし気になる人は観ておいて損は無いゾンビ映画だと思いますよ。
 (ちなみにアニメのスピンオフ作品は作られてるみたいですが、なんか予告をみた感じではコレジャナイ感が…)