NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ポゼッサー」(55点/サスペンス)

■■■「ポゼッサー」■■■
(55点/サスペンス)


 秘密裏に要人の暗殺を請け負う秘密組織に属するタシャは、特殊な装置を使ってターゲットに近しい人間の頭の中に入り込み、その人間のコントロールを奪って要人を暗殺。


 その後にコントロールしたターゲットを自殺させて、現場から離脱するという手法でミッションを遂行していた。


 しかし、ある任務をきっかけに『殺したターゲットの幻覚』に取り憑かれるようになった彼女は、徐々に精神の平衡を失っていき…

 


 他人の頭の中に入り込み、その人間をコントロールして暗殺を遂行するという特殊な技能を持った女性が、徐々に心を病んで精神のコントロールを失っていく…という、サスペンススリラー映画。


 デヴィッド・クローネンバーグ監督の息子であるブランドン・クローネンバーグによる新作サスペンススリラー映画ですが、本作も前作のアンチヴァイラルと同様に尖った設定と独特のセンスを持った作品となっています。


 アンチヴァイラルもSFっぽいテイストの作品でしたが、本作も『特殊な装置を使って他人の脳内に入り込んで、その人間を操ってターゲットを殺す暗殺者』という、ちょっとSFっぽいテイストの作品となっているあたり、この監督はSFっぽいテイストが好きなのかもしれませんね。


 ただ設定は凝っているのですが、それがお話としての面白さに繋がっているのかと言われると、ちょっと微妙なところ。


 『殺害の状況をコントロールできる』のが魅力とはいえ、『そこまで暗殺が困難じゃ無さそうなターゲット』を殺すために、暗殺者自身の精神に影響が出るような手の込んだ装置を使う意味が分かりませんし、作中で何度も『これなら普通に殺した方が早いんじゃ?』というツッコミを入れたくなったのは自分だけでしょうか?
 (政治的に有用な状況を作り出すとか、暗殺不可能なぐらい警護の固い相手を狙うんなら分かるのですが…)


 ストーリー的にも、『暗殺者である主人公』と『主人公に乗っ取られたターゲットの身内』の人間ドラマを中心にお話が進んでいくのですが、お互いの人生がクロスオーバーしている訳でも無くて、どちらのキャラの掘り下げもイマイチなので、どうにも『他人事』の事件を淡々と見せられているような感覚で、いま一つお話に入り込めませんでした。


 演出も『独特のテイスト』を出そうと頑張っているのは見られるのですが、流石に父親のD・クローネンバーグほどブッ飛んだ演出やら映像表現を再現できている訳でも無いので、どうにも『D・クローネンバーグに影響を受けた若手監督の映像』という雰囲気で、B級テイストを感じてしまうのは困りもの。


 お話も中盤辺りまでは妙にダラダラした部分が多くて、どうにも冗長な印象を受けてしまいます。


 終盤の展開と、オチの落としどころとか観終わった後の『何とも言いようの無いような視聴感』は悪くなかったので、もうちょっと全体的な映像表現やら演出のレベルが上がれば良い感じになるんだろうなあ…という感想を抱いてしまうような作品でしたよ。

 


 総評としましては、悪くは無いんだけど『ちょっと粗削りで退屈な部分が目に付いてしまうサスペンススリラー映画』という感じの作品ですかね。


 設定やら要所要所としては面白い部分はあるので、あと一歩なにか突き抜けたものがあれば、非常に面白い映画になりそうな雰囲気はあるんですけどね…


 気になるようであればチェックしておいても悪くは無い一本だと思いますが、個人的には前作の「アンチヴァイラル」の方が好きだったので、この監督にはもっとガッツリとしたディストピア系のSF作品を撮ってもらいたい印象ではありますよ。
 (そっちの方が本人の趣味にあってそうな気がするので…)